夏の惨劇の始まり? ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダの愛と涙のリポート 折れたシフトのロッドは復活するも、今度は心が折れそうな事件が!
パリ・オリンピックが終わったと思ったら、ウエダのフランス車には事件が起こっていた!
ヤフー・オークションで7万円のシトロエン・エグザンティアを手に入れ、10カ月と200万円かけて修復してから走り出したエンジン編集部員ウエダの自腹散財リポート。今回は海外からの個人輸入で手に入れたシフトノブの交換作業中に起こった悲劇のその後と、さらに続く惨劇についてリポートする。 【写真93枚】夏の悲劇の始まり エンジン編集部ウエダの心がまたしても折れそうになった事件の序章とは? 全93枚キャプション付き写真はこちら! ◆またしても緑の液体が…… シフトノブの中の金属のロッド先端が折れてしまったエグザンティア。幸いPからDなどへのポジションの操作はなんとかなるので、とりあえず移動はできるものの、このまま放って置くわけにはいかない。 このロッド破損の経験者は多いようで、色々と情報も収集できた。もともと構造的に脆弱な上に、シフトノブを外すときの回転方向を間違えると、簡単に折れてしまうらしい。僕の場合は経年劣化していたところに、最終的に自分でとどめを刺してしまったのかもしれない……。 また時期を同じくして、ハイドローリック・シトロエンの要ともいえる緑色の液体・LHMがふたたび減っていることも分かった。これは部品取りのXMを見せてもらった横浜市港北区のひがし自動車で発覚。エグザンティアのシフト・ロッドがどう固定されているかを確認しようと下まわりを覗いたら、フロントのLHMホースのクランプ周囲が濡れており、日差しを反射したのか、一瞬光ったのである。取り急ぎ綺麗にウエスで拭き取っておいたが、それ以上の漏れはなかった。 しかし数日後、いつぞやキャリアカーのお世話になった時のように、LHM不足による「STOP」の警告灯が点いた! 急きょ近くのフィットネス・ジムの駐車場に退避し、ボンネットを開ける。センター・コンソールのレバーを操作して車高を一番上まで上げ、エンジン・ルーム内のLHMタンクのフロートを見ると、下限のレッドラインよりずっと下にいた。 少々焦りながら、トランクに入れておいた予備のLHMを補充すると、すぐにフロートは上がってきた。下まわりを覗いても、どこからもLHMはこぼれ落ちてこない。 とはいえ掃除しておいたはずのLHMホースのクランプは、ふたたび湿っていた。指でホースに触れると、ぬるりと嫌な感触も伝わってくる。このジョイントは購入時からそのままで、三つ叉の部分もクランプもシトロエン純正部品でなく汎用品だ。長時間駐めている自宅駐車場の床も調べてみると、わずかにだがLHMの跡があった。どうやらここも、放っては置けないようだ。 シフトロッドとLHM滲みの修復に加えて、このタイミングでエンジン・オイルなど油脂類の交換を含めた、1年点検も実施することにした。2022年6月にオイルを代えてから、すでに約1万5000kmも走ってしまっている。主治医のカークラフトへ「もし気がついたことがあったら、同時にできることはやって欲しい」と伝え、入庫したのはシフトロッドが折れてからちょうど1カ月後。2023年6月上旬のことだった。 ◆不安がひとつ解消 作業はてきぱきと進んだ、らしいのだが、いっこうにエグザンティアは戻って来なかった。便りがないのは元気な証拠、と呑気に構えていたのだが、実はとんでもないことが起こっていた……。結局いったん僕の手元に戻ってくるまで、たっぷり1カ月かかったのである。 とりあえず、まず僕が依頼した修理項目と、一年点検に要した部品と工賃、そして同時進行した追加の作業の一覧を以下に記していこう。工賃と部品代(かっこ内に記載)は以下の通り。例によって詳細はギャラリー内の写真に付くキャプションを参照して欲しい。 ※部品価格などは2023年6月時点のもの ■依頼した修理項目 ・折れたシフト・ロッドの脱着、分解、ロッド溶接修理 32,000円 (※部品代なし) ・LHM滲みの原因となっていた汎用の三つ叉ホースとクランプを純正の三つ叉LHMリターン・ホース・ジョイントに交換と、リア・エレクトロ・バルブ接続ホース・クランプ交換 3,000円 (※三つ叉LHMリターン・ホース・ジョイント 1,300円、ホース・クランプ 200円×2) ■1年点検 ・エンジン・オイル、オイル・フィルター交換 2,000円 (※エンジン・オイル5リットル 18,000円、オイル・フィルター 1,500円、オイル・トリートメント 2,000円) ・オートマチック・フルード交換 2,000円 (※オートマチック・フルード5リットル 15,000円) ・エアコンのポーレン・フィルター交換 4,800円 (※ポーレン・フィルター 3,900円) ・フロント・ワイパー左右交換 0円 (※ボッシュ製 左2,000円、右3,300円) ・サーモスタットのエア抜きスクリュー交換 0円 (※中古の金属スクリュー 0円) ・ウインドウ・ウォッシャー・タンクのがたつき固定のため、フロント右ホイールアーチ内インナー・フェンダー脱着、ウォッシャー・タンク脱着、ウォッシャー液補充) 7,200円 (※ウォッシャー液 600円) なお、ウインドウ・ウォッシャー液の補充時、タンク固定ベルトの劣化によるがたつきが発覚したので、いったん脱着している。荒れた路面でカタカタと耳障りな低級音を立てるのは、こいつが原因だったようだ。てっきりエグザンティアの弱点、フロント・サスペンションのアッパーマウントが発生源では、と思ってかなり悩んでいたのだが、とりあえずは一安心である。 ◆見た目もすっきり これ以外に手を入れたのは、下まわりの点検で見つかったドライブシャフト・ブーツのバンド緩みの再締め付け。そしてシフト・ロッドを脱着するならばついでに、ということで、劣化していたサイドブレーキ・ケーブルと、床下やエンジン・ルーム内壁の断熱材も取り替えている。 この断熱材は、あちこちで表皮が剥がれ、茶色い裏側部分がめくれていたり、剥がれ落ちていた。特にエンジン・ルーム内壁はボンネットを開ける度に目に付くところだし、いかにもくたびれた中古車みたいで気になっていたので、とてもすっきりした。エグザンティアの純正部品は欠品で、プジョーとランチアの解体車から外したパーツを加工したそうだが、違和感もほぼなく仕上がったのもうれしい。 シフト・ロッドの補修、サイドブレーキ・ケーブルの交換、断熱材の交換は、いずれも排気管のヒート・シールドなど車体床下の分解が必要だ。何度かに分けて作業するのは工程が重複するし、脱着のため部品に余計なダメージを与えることもある。予算が無尽蔵にあるわけじゃないけれど、こういう時にケチるのは、クルマの整備では結局遠回りだ。主治医のカークラフトはこのあたりを見越し、後々のことを考えて先回りして着手した。無駄に工賃がかからないのは本当にありがたい。でもトータルでの作業項目は増えているから、修理費の捻出は大変である……。 なお、以下が追加の作業の一覧だ。 ■追加作業 ・右フロント・ドライブシャフト・アウターブーツのクランプ緩みのため再固定、グリス補充 4,800円 (※ブーツ固定用クランプ 980円) ・左右サイドブレーキ・ケーブル交換、調整 18,000円 (※サイドブレーキ・ケーブル 左9,300円、右9,500円) ・床下およびエンジン・ルーム内断熱材脱着、交換 7,200円 (※床下とエンジン・ルーム側の断熱材はそれぞれ解体車の初代ランチアy(イプシロン)およびプジョー206から、それぞれ流用 0円) 合計 148,780円 でも、ここまではある程度予想通り、ではある。異国の旧いクルマで過酷な日本の道を年間1万5000km以上走り回るには、10万円強の出費は仕方ないだろう。とはいえシフトロッドに関しては完全に想定外の出費だったけど……累計支払額はついに250万円を突破してしまったけど……うーん、支払はたぶんなんとかなるだろう! しかし作業を終え、ロードテストに出たカークラフトの篠原大輔さんは、支払いにおびえる僕以上に肝を冷やすことになってしまったらしい。電話口の声が、少々焦っているように思えたのは、たぶん気のせいじゃない。 「あのですね、エグザンティアの試運転中、急にパワステが効かなくなったんですよ……」 嗚呼神様、購入直後に10カ月の時間と200万円の費用をつぎ込んで徹底的に手を入れ、さらに1年で50万円を投じたのですから、そろそろ落ち着いて欲しいのですが、まだ駄目なのでしょうか。確かに手を入れていないところは残っております。サスペンションのアッパーマウントもそうですし、ラジエーターなど冷却系もそうですし、LHMの流れるホースもそうですし、そして効かなくなってしまったパワー・ステアリングも、いわば未開の場所の1つですよね……。 リポート車が日本へやって来て27回目となる夏の惨劇はこうして始まり、そして続くのである。 ■CITROEN XANTIA V-SX シトロエン・エグザンティアV-SX 購入価格 7万円(板金を含む2023年7月時点までの支払い総額は252万9702円) 導入時期 2021年6月 走行距離 17万6829km(購入時15万8970km) 文と写真=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=岡村智明/カークラフト (ENGINE WEBオリジナル)
ENGINE編集部
【関連記事】
- ヤフオク7万円のシトロエン・オーナー、エンジン編集部ウエダ、シフトのノブを交換しようとしたら、中のロッドが折れていた!【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#42】
- ヤフオク7万円で買ったシトロエンのオーナー、エンジン編集部ウエダ、フランスの聖地でうれしいサプライズが!【シトロエン・エグザンティア(1996年型)長期リポート#44】
- きっかけは小学生の時に組み立てた『週刊ラジコンカー』 愛車のGDB型スバル・インプレッサWRX STIは、1/1スケールのラジコンカー!
- 156を黙って売ったら家族に泣かれた 人生初旧車のアルフェッタGTとアバルト124スパイダーに乗るオーナーがたどった愛と笑のイタリア車遍歴とは?
- 「ドッカンターボ」の凄まじさ 930ターボから992ターボまで歴代モデルを一気乗り ポルシェ・ターボの50年!