保育の質どうなる? 76年ぶり基準改善も保育士不足深刻 スキマバイトの単発保育士も
■保育士養成校の入学者数も減少
国の調査によると、保育士を養成する大学や短大など指定保育士養成施設の入学者数は減り続け、2021年度は4万1082人でしたが、2022年度は3万8597人と約2500人減っています。また、2024年7月時点の保育士の有効求人倍率は2.69倍で、約2万7000人の保育士が足りていません。 また保育士の平均給与は、去年、年間約400万円で、同じくこどもと関わる職業の小中学校教員の平均給与より約260万円低い状態です。平松理事長は実情をこう語ります。 「辞めていきますよね。保育好きだったけど、もうやれませんって」「命張って命を守っていて、1、2、3、4、5、あっ!1人足りない!!って冷や汗がバーっと出るような経験を保育士なら誰でもしている」「ものすごく責任を負っている。配置基準や面積基準をさらに改善(保育士の負荷を軽減)したり、給料を高くしたり、専門性をもう少し認めてもらわないと、潜在保育士は帰ってこない」「それ(対策)をしないと保育士がいないからこどもを受け入れられないという形の待機児童が増えていくと思います」
■スキマバイトの保育士も
こうした中、面接や履歴書なし、単発などで、すきま時間に働くアルバイトのアプリ「タイミー」で保育人材を集める保育園も。平松理事長の知り合いの園もシフト表に"タイミーさん"という記載があるといいます。「(保育士の)個人名ではなく“タイミーさん”なんだ。どのような人が来るかわからないタイミーさんに頼まないと、保育が回らない時代になったんだと衝撃でしたね」 株式会社タイミーの担当者によりますと、保育園でのタイミー活用が増えているということです。園側が確認できる働く人の情報は、名前、年齢、性別に加えて、タイミーに登録しているワーカーがこれまでにタイミーを通して働いた事業者からの「good」「bad」などの評価の実績です。タイミーは、安全確保のため、保育園側が求人内容に「保育士資格を持っていること」(資格情報はワーカー本人から園に事前に提出)といった条件を加えられるようにしているほか、タイミーの「保育専門チーム」の担当者が相談にのり、園の考えや状況などに応じて、最初は清掃のみをしてもらうといった業務の切り分けを考え、受け入れ方を園と一緒に決めるなどの仕組みがあるということです。 そしてタイミーは、保育園側が、働きに来る人について、保育士特定登録取消者管理システム(過去にこどもへの性暴力などで保育士資格を取り消された人物が登録されている)で調べることを推奨しています。こども家庭庁によりますと、現在国の制度として、過去に不適切保育をした保育士を検索できる仕組みはないということです。このような中でのスキマバイトの活用に平松理事長は不安を覚えるといいます。「性加害以外の不適切保育で職場を追われた人たちの情報は分からない」「保育は頭数がそろっていればいいってものではない」 また東京都の公立保育士も「のどから手が出るくらい人が欲しい園もあると思う。でも警備上、不特定多数の人が頻繁に園に出入りすることで、園に不審者が入りこんだとしても気付きにくくなってしまう。園の中の構造を1日限りの人が知ることや防犯面を考えても怖い」と話します。
■安心できる質の高い保育のため、早急な施策を
国は2024年度に、保育士と幼稚園教諭の給与を前年度比10.7パーセント引き上げる処遇改善をしていて、この改善額を2025年度も引き続き確保するとしています。さらにICTの推進や宿舎借り上げ支援事業など保育士確保のためのさまざまな取り組みを進めています。 こども、保護者、保育者も安心できる環境をつくるため、さらに実効性のある保育士確保策を早急に推進することが国や自治体に求められています。将来を担うこどもたちに質の高い保育を提供することは本人や保護者のためだけでなく、日本社会にとって必要なことだと言えます。