EVでデッドヒート、フォーミュラEが示す自動車レースの未来
(ブルームバーグ): スタードライバーがしのぎを削り、大企業の華やかな広告に彩られる自動車レースの最高峰、フォーミュラワン(F1)は巨額のマネーが動く一大スポーツイベントだが、二酸化炭素(CO2)排出量ではアフリカの小国に匹敵する。一方、電気自動車(EV)レースの世界シリーズ「フォーミュラE」は規模はまだ小さいが環境面での優位性があり、将来的な発展への期待が高まっている。
環境問題への積極的な対応がモータースポーツの進むべき道であることは明らかであり、フォーミュラEがガソリンを大量に消費する先輩格のF1に追いつくのは時間の問題だ、とまもなく設立10周年を迎えるフォーミュラEのジェフ・ドッズ最高経営責任者(CEO)は話す。
ドッズ氏は3月、日本初開催となった東京E-Prixでのインタビューで、当然F1と比べて非常に有利になる時が来るとした上で、「F1よりも大きな存在になるのか、それともF1を引き継ぐのか、それは分からない。現時点で私が知っているのは、私たちの前にはまだたくさんの成長があるということだけだ」と話した。
メディアやスポンサー企業がEVをベースとしたモータースポーツに対する視聴者の関心の高まりに賭ける中、フォーミュラEに対する世界的な関心は急速に高まっている。フォーミュラEのパートナーにはスイスのジュリアス・ベア・グループやアリアンツ、独DHLグループなどが名を連ねる。米CBSスポーツはより多くのレースを放送すると発表し、タイを含む多くの国が大会の開催を希望している。
F1が最も人気や影響力がある自動車レースであることに変わりはない。そのファン層は中国や米国など発祥の地である欧州以外でも拡大し続けている。しかし、持続可能性(サステナビリティ―)への懸念の高まりに伴い、新しいタイプのモータースポーツファンも形成されつつある。
F1は2023年に約15億人のテレビ視聴者を獲得したのに対し、ドッズ氏によれば、フォーミュラEは4億人近いファンを獲得している。F1にはいない著名な女性ドライバーの存在も、女性や40歳以下の若いサポーターを呼び込むのに役立っているという。