日本の建築を支えてきた、“構造デザイン”を知っていますか? 建築家の仕事を支える存在
「構造デザイン」という言葉をご存知だろうか。日本には世界に誇る建築家が数多く存在するが、建築家の仕事を支える構造家の存在はあまり知られていない。重力や風力といった力の流れや素材と真摯に向き合い、その時代や環境に応じて建築を支えてきたのが構造デザインである。 【画像多数】展示の様子。会場でひときわ目を引く、法隆寺五重塔の1/10模型など
法隆寺から宇宙まで、“構造”にフォーカス
天王洲にあるWHAT MUSEUMでは8月25日まで『感覚する構造- 法隆寺から宇宙まで-』を開催中だ。現存する世界最古の木造建築、法隆寺五重塔から現在開発中の月面構造物まで、建築の「骨組み」を創造してきた構造デザインに焦点を当てたユニークな展覧会となる。会場には100点以上の名建築の構造模型を展示し、構造デザインの世界をわかりやすく紹介する。 展覧会は2フロアにわたり、4つのテーマで構成されている。初めにフォーカスするのは、近年サステイナブルな建材として世界的に注目が高まる木造建築。伝統的なものから最先端のものまで木造の特質を歴史的に俯瞰し、未来の木造建築の可能性を考察する。たとえば小さな木材を組み合わせた「錦帯橋」や「エバーフィールド木材加工場」から、直径1.2mもの大きな柱を用いた「東大寺大仏殿」まで、同じ木造建築でも木材のサイズや構造には大きな違いがある。一方、「法隆寺五重塔」の1/10模型は大工の田村長治郎氏が一人で制作したものだが、この塔が度重なる地震に耐えてきたのは、建物の上下を貫する心柱(しんばしら)が制振構造のような動きをしているためで、この構造は東京スカイツリーにも応用された。
続く展示ブースでは日本を代表する構造家の系譜を総括する。建築家と協業し構造デザインを創造してきた構造家の存在は、日本建築に多大な功績を残した。会場では30名以上の構造家のインタビュー映像を通して、その思想と哲学に迫る。 3つめは「構造デザインの展開」と題し、構造デザインで得た幾何学の知見を生かしたファッションや地図図法など、さまざまな領域での横断的な取り組みを展示。たとえばコンパクトに収納できて持ち運べるテントは、畳んだ状態から広げて安定させるという点では構造の考え方が応用されている。私たちの身の回りにあるモノも、力学的視点で観察することにより新たな発見が生まれるだろう。