たった1年で総フォロワー100万人突破! 「こねこフィルム」を手掛ける“兄弟クリエイター”が明かす「話題作に必要なのは役者の“知名度”ではありません」
「自分たちが役者さんたちの知名度を上げてしまえばいい」
他の作品にも言えることだが、見ている側は「演技って、すごいんだな」とつい感動してしまう。監督の狙いは、まさにそこにあるのだという。 「こねこフィルムを始める以前から『鬼が笑う』、『近江商人、走る!』といった作品を撮ってきたのですが、いつも悩まされたのがキャスティングの権限でした。できれば自分の敬愛する役者さんをたくさん起用したいと思っても、“数字を持っていないから”と、演技力ではなく知名度が理由で却下されることが何度かありました」(龍一さん) 演技力は絶対なのに、起用がままならない役者さんがいる。そうした状況を打破するためにスタートしたのが「こねこフィルム」なのだという。 「知名度で物言いがついてしまうのならば、自分たちが役者さんたちの知名度を上げてしまえばいい、という逆転の発想でした。こねこフィルムの作中の役名は、すべて役者さんの本名にしているのですが、それも観る人に役者さんの名前を覚えて欲しいから。作品を通じて、自分たちが大好きな役者たちの演技を見てもらい、ファンになってもらう。そうして知名度が上がれば、映画のキャスティングの際にも誰も文句を言わなくなるだろう、という作戦です」(龍一さん) 自分たちで撮って、自分たちで動画を投稿するというやり方は、広告代理店で働いた経験のある和比古さんの経験が活きていた。 「宣伝費って結構ブラックボックスなんですよね。予算1000万円でSNS広告を出したとして、本当にその全てが自分たちの出したいところに出ているかは、誰にも分からないんです。一方、動画を配信するアカウントを自分たちで持ってしまえば、宣伝の予算も動画制作に回すことができます。誰にも邪魔されず、クリエイターファーストで物事を進められるのも利点ですね」(和比古さん)
仲良くやっているように見えて、皆がライバル同士
動画制作に台本は存在しない。役者たちは撮影日の3日前に、タイトルと企画案、大まかな構成やシチュエーションだけを伝えられる。月1回の撮影現場にレギュラーの役者陣が10人ほど一堂に会し、そこで監督と役者とが一緒に作品をディレクションしていくのがこねこフィルムのやり方だ。 そのため、現場には独特の緊張感が漂っているという。 「役者は自分でアイデアを出し、採用されないと出番がありません。作品は撮影の1週間後ぐらいには世に出るので、その結果次第で、“じゃぁシリーズにしようか”ってなることもあれば、“あの回はちょっとダメだったね”と言われてしまうこともある。仲良くやっているように見えて、皆がライバル同士なんです。そういう緊張感も大事だと思っています」(龍一さん) 中には役者発案の企画もある。赤間麻里子さん扮する旅館の女将が、宿泊者の“決定的な瞬間”を毎回のぞき見するという「確信犯」という作品は、赤間さんのアイデアが採用されたものだそうだ。 「役者さんは自分の演技が評価対象になるわけですが、監督は企画や構成が評価対象です。役者さんの企画が自分のものより評判になったらプライドが傷つきます。だから、上位10作品は自分の作品でキープするんだという気概でやっています。これもある種の緊張感ですね」(龍一さん) 作品のテーマに社会風刺的なものが多いのは、どういう狙いがあるのだろうか。 「それは僕たちのもともとの作風です。右か左か決められないテーマについて、“あなたはどう思いますか?”と問いかけるような、議論を呼ぶような作品をこれからも作っていきたいですね」(和比古さん)