核・ミサイル開発の裏で北朝鮮の“外貨獲得”戦略 サイバー犯罪に密輸も…
核・ミサイル開発を進める北朝鮮。国連安保理制裁の影響で、経済的な苦境も伝えられる中、その莫大な開発資金をどうやって確保しているのか。サイバー犯罪、密輸、肉体労働…北朝鮮が軍拡路線の裏側で進める“外貨獲得戦略”とは。
■中国当局が数十人を拘束 北朝鮮の“金密輸”に関与か
最近、中国の公安当局が力を入れて大規模な摘発に乗り出したものがある。それが、北朝鮮による金塊の密輸だ。2023年10月以降、北朝鮮産の金の密輸に関わったとして、中国人が次々と公安当局に拘束されているという。 中朝関係筋によると、23年末までのわずか3か月間で当局が差し押さえた金塊は、約1000キログラム(市場価格で約85億円相当)。少数民族の「朝鮮族」など、数十人の中国人が拘束された。いずれも遼寧省や吉林省の中朝国境地域で密輸に関わったとされる。 “後ろ盾”とされる中国が、北朝鮮の密輸にここまで厳しい態度をとるのは異例だ。中朝関係筋は「最近の北朝鮮とロシアの蜜月関係に対する不快感の表れではないか」と指摘する。 北朝鮮にとって、金を含む鉱物資源は外貨稼ぎの主力だった。しかし、16年の国連安保理制裁で輸出が禁止され、近年は新型コロナウイルス感染防止に伴う国境封鎖も影響し、北朝鮮経済は厳しい状況が続いている。 こうした中、北朝鮮は23年に入り、金の密輸を急拡大させた。従来の「瀬取り」(洋上で船荷を積み替える手法)に加え、中国との国境封鎖が緩和されると、在外公館を拠点に外交官が金を運搬し、中国の業者に密売するケースも出てきたという。
■核・ミサイル開発を加速 “外貨稼ぎ”は最重要課題に
北朝鮮が外貨獲得に躍起なのは、核・ミサイル開発にかかる莫大な軍事費を必要としているからだ。23年11月には、“3度目の正直”で軍事偵察衛星の打ち上げに「成功」したと主張。韓国の情報機関は「ロシアの技術支援があった」との見方を示した。同年9月に金正恩総書記とプーチン大統領が会談を行って以降、両国の軍事協力が拡大した。 ロシアという技術的な後ろ盾を得た北朝鮮が、大量破壊兵器の開発をさらに加速させることになれば、それにあてる資金の調達がますます重要なミッションとなる。