セダンの良さを再認識させてくれるトヨタ「クラウン・セダン」は燃料電池を搭載した斬新なメカニズムの“第3のクラウン”
トヨタ自動車が「クラウン・セダン」を2023年11月2日に発売しました。このクルマで注目していただきたいのは、「セダン」という伝統的な車体に、水素を使う燃料電池という斬新なメカニズム搭載モデルの設定です。 【内装デザインなど細部の画像を見る】
■トータルな出来に感心する“第3のクラウン”
クラウンファミリーとしては、22年登場の「クロスオーバー」、23年10月の「スポーツ」に次ぐ第3のクラウンです。スタイリングにも新しさが感じられ、全長5030mmの余裕あるサイズでありつつ、トランクの存在感を抑えたファストバックスタイルが採用されています。 ホイールベースも3000mmと長く、トヨタでは後席主体のいわゆるリムジンとしての需要にも期待しているようです。たしかに、後席空間は控えめな色調で、日本のユーザー好みの落ち着いた印象といえるでしょう。 昨今セダンに乗ろうという人は、むしろ奇特といわれます。いつのまにか、SUV=気持ちの若々しい行動的な人、セダン=守旧派、みたいなユーザーのセグメンテーションができたりして、中古車市場でも価格に差がつく事実も生まれています。 だからといって、それだけで評価してしまうのはもったいないことです。クラウンセダンに乗ると、トータルなクルマとしての出来の良さに感心させられるからです。
■セダンの良さを再認識できる乗降アクセスと快適性
今回で16代目になるクラウン。2022年に4姉妹でのラインナップ展開(4番目はエステートです)が発表された際、「クロスオーバー」がトップバッターだったこともあり、“あれ? セダンも出すんだ?”という声がありました。 スタイリングこそ先述のとおりファストバックスタイルが強調され(従来のクラウンもだんだんファストバックスタイルに近づいてはいましたが)新しい世代であることを印象づけていますが、セダンにはセダンのよさがあるのは事実です。 ひとつは、着座位置がSUVより低く、スポーツカーよりは高いので、乗り降りがしやすいこと。とくに年配の乗員には、セダンがもっともアクセスしやすいのです。 もうひとつは、静粛性をはじめとする快適性。セダンは基本的に3つの箱とも呼ばれ、乗員が乗るキャビンが荷室と隔壁で隔てられています。そのため、自動車メーカーがいつも手を焼くリアからの音の侵入が抑えられます。 サスペンションシステムの設計にしても、SUVだとフロアが高めになりますから、サスペンションアームやコイル/ダンパーに設計上の無理がかかりがちです。動きの自由度が少なくなり、乗り心地からしなやかさが失われます。 クラウンセダンに話を戻すと、今回のクラウンファミリーの中で唯一、後輪駆動用のプラットフォームを使っています(あとの3モデルは前輪駆動をベースに後輪を電気モーターで駆動するプラットフォーム)。 ドライブトレインは、2.5リッターエンジンを使ったハイブリッドHEVか、「MIRAI」と共用の、水素と酸素を化学反応させて電気モーターを駆動する燃料電池FCEV。