ちょっとしたスタイリングの「センス」が鍵。【2024年秋冬トレンド解説|飯田珠緒編】
海外コレクションを取材した5人のおしゃれプロに緊急アンケート。今シーズンのムードから感動のショーまで、それぞれの視点でとらえたライブなトレンド解説をお届け。
Q1. 24-25 秋冬コレクション全体のムードや傾向。
Answer:今回は会場で写真を撮るのはやめて、ショーを見ることだけに集中しようと思ってコレクションに臨みました。前シーズンと違う新しい流れは感じられなかったものの、原点回帰ともいえる自分らしさをしっかり打ち出したブランドが印象に残りました。シェミナ・カマリの初ショーは、クロエはこれでいい!と思わせるものでしたし、ヴァレンティノもモダンかつエレガントなピエールパオロ・ピッチョーリらしいコレクション。それだけに彼の退任は残念です。 今季のムードをあげるとしたら「それぞれの日常」でしょうか。その代表ともいえるアンダーカバーとマリーン セルのショーがとてもよかったです。アンダーカバーは日常をうまく非日常として演出。ある女性の一日を思わせるルックで、彼女の行動やパーソナリティをランウェイに描いていました。
マリーン セルは空間も演出も際立っていました。さまざまなタイプのモデルが登場し、それぞれレコードを抱えていたりピザの箱を持っていたり。女性のなにげない日々の行動が表現されていました。
Q2. 注目しているトレンド(スタイル、アイテム、素材など)は?
Answer:グローブやエコファーなど気になるものはありますが、いまの時代のスタイルを作るのはちょっとしたスタイリングの"センス"だと思います。ミュウミュウのコートやシャツの襟元をぐしゃっと崩してそこにパールのネックレスをつけるというような、ニッチな部分に目がいきます。
ドリス ヴァン ノッテンでも平凡なスウェットを首に巻いたような着方や絶妙のカラーミックスに"センス"を感じました。
Q3. 特に印象に残ったブランドとその理由。
Answer:バレンシアガのショーがすべてにおいて素晴らしかった。ショーの前に聞いたデムナからのボイスメッセージは心に響く内容でしたし、自然の風景から人工的コンテンツのコラージュに変わっていくショー会場のスクリーンの映像はSNSの情報の渦に巻き込まれてもがいている現代社会について考えさせられるものでした。ランウェイの後半に登場したキャミソールをレイヤードしたようなルックにお金がなくても工夫しておしゃれを楽しんでいた若い頃の自分を思い出して、個人的にもグッときました。こういうアイデアをプレタポルテ(高級既製服)のランウェイで発表している、そのこと自体が私にとっては価値あること。