いつの時代も正義は少数派だった…?“光”のジェダイと“闇”のシス「スター・ウォーズ」の2大勢力の変遷をたどる
「スター・ウォーズ」オリジナルドラマシリーズ最新作「スター・ウォーズ:アコライト」が6月5日(水)よりディズニープラスで独占配信される。物語は『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』(99)の100年前、銀河共和国と平和の守護者ジェダイの黄金時代“ハイ・リパブリック”を舞台にダークサイドの誕生が描かれる。 【写真を見る】キャリー=アン・モスが「マトリックス」で鍛えたアクションを披露?(「スター・ウォーズ:アコライト」) これまで「スター・ウォーズ」シリーズでは、ルーク・スカイウォーカーら反乱同盟軍vs銀河帝国軍、レジスタンスvsファースト・オーダーといった形で、弱者と組織の対立、おもに強大な力を持つ悪に抗うジェダイの姿が描かれてきた。ところが、「アコライト」はその勢力関係から一転、光の時代にいかに闇の種が芽吹いていくか?に焦点を当てた物語になっている。ショーランナーを務めるレスリー・ヘッドランドは、「本作では悪者たちが弱者で、ジェダイが組織側になるんです。ジェダイは慈悲深く、“光”の存在だから脅威ではないけど、彼らの勢力は悪者たちを圧倒的に上回っている、そんな時代を描きたかった」と明かしている。 悪が生まれる瞬間という意味ではシリーズの“原点”とも位置付けられる「アコライト」の配信前に、改めてシリーズにおける“光”のジェダイと“闇”のシスの勢力の変遷を振り返ってみよう。 ■【EP1~3】平和な時代に忍び寄る“見えざる脅威”…あっという間にジェダイ壊滅、闇の時代へ 『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』(99) 『スター・ウォーズ /クローンの攻撃(エピソード2)』(02) 『スター・ウォーズ/シスの復讐(エピソード3)』(05) プリクエル・トリロジーで描かれるのは、長らく栄華を誇っていた銀河共和国とジェダイの崩壊の物語だ。『ファントム・メナス』は、交易ルートの課税を巡る対立から通商連合による惑星ナブーへの派兵で幕を開ける。銀河元老院の依頼でジェダイは事態収集に乗りだすが、この出来事はシスの暗黒卿、ダース・シディアスが裏で糸を引いていた。当時シスは全滅しているとされていたが、シディアスはナブーの議員シーヴ・パルパティーンとして銀河共和国打倒のため暗躍していた。通商連合によるナブー侵攻の混乱を利用してパルパティーンは銀河元老院の最高議長に就任。穏健な平和主義者を演じながらその裏で、頭巾をかぶったホログラム映像として登場した。 同じころジェダイ・マスターのクワイ=ガン・ジンは、アナキン・スカイウォーカーと出会う。ナブーの元首パドメ・アミダラ女王を通商連合から保護するため辺境の惑星タトゥイーンを訪れたクワイ=ガンは、アナキンの優れた素質と能力を目にして、彼こそシスを倒しフォースにバランスをもたらす「選ばれし者」だと確信。のちにダース・モールとの戦いに敗れたクワイ=ガンの遺志を継いだパダワン(弟子)のオビ=ワン・ケノービが、アナキンの指導をすることになった。 パルパティーンは『クローンの攻撃』からその本性を見せ始める。最高議長に就任してから10年、多くの星系が銀河共和国から離脱していた。それら分離主義勢力はドゥークー伯爵のもと独立星系連合を結成し軍備を増強し始めた。この出来事も裏で糸を引いていたのはパルパティーンで、独立星系連合の脅威に備え非常時大権を得て、クローン兵による銀河共和国軍の設立を決定。ジェダイだけで分離主義勢力に立ち向かうことは不可能なため、ジェダイ評議会も銀河共和国軍設立に賛成した。パルパティーンは権力を掌握する一方でアナキンに接近。「ヨーダをしのぐジェダイになれる」と自尊心をくすぐりながら関係を深めていった。パルパティーンの抜け目のなさに舌を巻く。 やがて銀河共和国と独立星系連合の間で「クローン戦争」が勃発。『シスの復讐』では、3年にわたる戦争のなか、ついにパルパティーンがアナキンをダークサイドに引き込む。自身の弟子であるドゥークーをアナキンに殺害させ、予知夢で見た妻パドメの死を回避できるのは暗黒面すなわちシスの力だけ、と心をくすぐった。誘惑に屈したアナキンはダークサイドに堕ち、ダース・ベイダーを襲名する。パルパティーンはその正体を知ったメイス・ウィンドゥとライトセーバー戦を展開。アナキンのサポートを受けながら、フォース・ライトニングでとどめを刺すシス本領発揮の激戦も見どころだ。 パルパティーンは計画の仕上げとして銀河共和国の反逆者としてジェダイ処刑を命じる「オーダー66」を発令。チップを埋め込まれたクローン軍によって、ジェダイは壊滅に追い込まれた。ジェダイを駆逐したパルパティーンは、2万5千年以上続いた共和国を解体し銀河帝国として再編すると宣言し、初代皇帝に就任。まるでオセロのコマが一斉に白から黒へ裏返るようにして、銀河帝国とシスが独裁支配する、暗黒の時代が始まった。 ■【EP4~6】ジェダイ不在の時代に、圧倒的大多数の帝国軍に立ち向かった少数の“新たなる希望”たち 『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』(77) 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲(エピソード5)』(80) 『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』(83) オリジナル・トリロジー第1弾『新たなる希望』は、銀河帝国誕生の約20年後に幕を開ける。強大な武力を背景に帝国が勢力を広げるなか、銀河共和国の再建を目指して、惑星オルデランのプリンセス、レイアの義父ベイル・オーガナらは反乱同盟軍を組織。帝国を相手に抵抗運動を繰り広げていた。帝国の最終兵器デス・スターの設計図を入手したレイアは、そのデータを託したR2-D2をタトゥイーンに送ったことから、この惑星の住民だった青年ルーク、長年タトゥイーンに隠れ住んでいたオビ=ワンと共に反乱同盟軍に参加。運び屋として雇われたハン・ソロとその相棒でウーキー族のチューバッカも戦いに巻き込まれていく。 オビ=ワンはルークを訓練し、ジェダイだったという父親譲りのフォースを呼び起こす。オビ=ワンはかつてパダワンだったベイダーによって命を落とすが、フォースを発揮したルークは「ヤヴィンの戦い」でデス・スター破壊に成功。帝国に痛手を与えた。強大な帝国に対し、網の目をくぐるように戦う反乱軍の活躍は痛快だ。 続く『帝国の逆襲』では、デス・スターを破壊された帝国が反乱同盟軍の追跡をさらに強化していった。反乱軍は氷の惑星ホスでの戦いで大敗を喫し、構えていた秘密拠点エコー基地を放棄するなど、撤退に次ぐ撤退で追い込まれていく。一方、ルークはパイロットとして反乱軍で活躍するなか、フォースの力を磨いていく。フォースを極めるため、ルークはオビ=ワンの霊体に誘われ惑星ダゴバで隠遁していたヨーダに会い、彼のもとで修行を始めるが、友人たちの命の危機を察してクラウド・シティへ。だが、ルークの力はいずれ脅威になると感じていたダース・シディアスこと皇帝やベイダーの策によるものだった。ベイダーと対決したルークは圧倒的な力の差を見せつけられたうえ、敗北。自分がかつてのアナキン・スカイウォーカー、ベイダーの息子だと知らされる。 『ジェダイの帰還』では、反乱同盟軍を追い詰めていた帝国が、銀河の支配を完璧なものにするべく、初代をはるかに上回る威力を持った第2デス・スターの建造を進めていた。第2デス・スターが森の月エンドアの軌道上にあるとの情報を入手した反乱軍は、エンドアにある防御シールド装置の破壊作戦を決行するも、すべて皇帝が仕掛けた罠だった。皇帝はエンドアにいる仲間の命を人質に、ルークの負の感情を呼び起こし、ダークサイドへの誘惑を試みるが失敗。フォース・ライトニングでルークを殺そうとするが、苦しむ息子を目にしたベイダーは良心に目覚め、皇帝を倒して息子を救った。このクライマックスは『シスの復讐』のアナキン、パルパティーン、メイスの三つ巴を彷彿とさせる息詰まる戦いだった(製作されたのはこちらが先だが)。一方エンドアでは思いがけないイウォーク族の活躍により反乱軍は勝利を治めていた。ベイダーも息を引き取り、銀河帝国の支配による闇の時代は終わりを告げた。 ■【EP7~9】帝国崩壊後も強大な力を持つ残党が銀河を侵略…光は闇に本当に打ち勝てるのか? 『スター・ウォーズ/フォースの覚醒(エピソード7)』(15) 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ(エピソード8)』(17) 『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)』(19) シークエル・トリロジーは銀河帝国崩壊から約30年後の物語だ。新共和国が樹立し銀河は平和を取り戻したように思えたが、帝国軍の残党を中心に最高指導者スノークが組織したファースト・オーダーが勢力を拡大。そこでレイアは新共和国の支援を得てレジスタンスを組織し、彼らに対抗していた。一方ルークはジェダイ復興を目指しアカデミーを設立したが、レイアとハンの息子、ベン・ソロの心の闇と対峙したのを機に失踪してしまう。祖父ベイダーを信奉するベンはダークサイドに堕ち、カイロ・レンと名乗り、ファースト・オーダーに加わっていた。 そんななか、ファースト・オーダーは惑星を改造したスターキラー基地を建造。強大なビームで星系ごと新共和国の首都惑星ホズニアン・プライムを破壊してしまう。この「ホズニアン事変」で新共和国は終止符が打たれた。旧帝国のテクノロジーを使ったスターキラー基地はデス・スターのアップデート版。強力なビームで星々を木っ端みじんにする様はシリーズ屈指の迫力だった。しかしレジスタンスは、ファースト・オーダーの脱走兵フィンの協力でスターキラー基地の破壊に成功する。このミッションには惑星ジャクー出身の少女レイも参加していた。両親に捨てられ自身の素性も知らずに育った彼女は、しだいにフォースを覚醒していく。 新共和国を倒したファースト・オーダーは力による銀河支配を推進。レイアたちレジスタンスは孤立無援の状況となり、絶対絶命のピンチを迎える。レイアの命を受け、レイは最後の希望ルークを連れ戻すため彼が隠匿している惑星オクトーに向かう。『最後のジェダイ』ではジェダイ・オーダー最後の一人、ルークの帰還が描かれる。ルークと会ったレイは彼のもとで修行を積みフォースに磨きをかけていく。一方カイロ・レンは師というべきスノークを殺害し、ファースト・オーダーの新たな指導者に君臨。レジスタンスをあと一歩まで追い詰めるが、ルークの命懸けの戦いでその根絶は阻止された。絶対的存在であるジェダイやシスなき時代を象徴する波乱のドラマを展開した。 最終作『スカイウォーカーの夜明け』では、ついに旧皇帝パルパティーンが復活。ダークサイドの力でなんとか生き延びていたパルパティーンは、惑星エクセゴルでシスを崇める組織シス・エターナルと帝国再建に着手。30年もの歳月を費やし、大艦隊ファイナル・オーダーを完成させていたのだ。スノークはパルパティーンの操り人形で、カイロ・レンの誘導を含めすべては復権計画の一環だった。さらにレイが実はパルパティーンの孫娘だと判明。孫娘を強いシスにするため、パルパティーンは自分に対するレイの怒りや憎しみをあおっていく。家族の確執を描いてきた本シリーズらしい展開だ。 レジスタンスとファイナル・オーダーの最終決戦「エクセゴルの戦い」さなか、レイはダークサイドから解脱したカイロ・レンと共に祖父に対峙する。パルパティーンの誘惑に屈しなかったルークに教えを受けたレイは、ルークとレイアのライトセーバーで祖父のフォース・ライトニングを打破。長年にわたって暗躍してきた“最後のシス”パルパティーンの死によって銀河に真の平和が訪れた。フォースにバランスをもたらす救世主が、“光に救われた”シスの血筋という「スター・ウォーズ」にふさわしい結末で壮大なサーガはひとまず幕を閉じた。 ■【「スター・ウォーズ:アコライト」】ジェダイ全盛の時代、密かに闇が誕生する…!? そして「アコライト」では、『ファントム・メナス』の100年前、栄華を誇っていたジェダイが何者かに殺害される事件が発生。カギを握るのは、元パダワンの女性、メイ(アマンドラ・ステンバーグ)だという。彼女のかつての師であるジェダイ・マスター、ソル(イ・ジョンジェ)は真相を追うが、ジェダイたちの前に強大な闇が立ちふさがる。 予告編では、ナイフを振りかざすメイとジェダイ・マスターのインダーラ(キャリー=アン・モス)の緊迫感あふれるバトルシーンや、ソルを中心とした大勢のジェダイが、口元に特徴のある黒いマスクを被って赤いライトセーバーを手にするシスらしき人物に吹き飛ばされるような描写がある。ジェダイにより平和が守られ、闇の勢力は存在しないとされていた時代に、一体なにが起きたのか?「スター・ウォーズ:アコライト」の配信開始を待ちたい。 文/神武団四郎