西鉄天神大牟田線14年ぶりの新駅 「桜並木駅」の周辺を歩いた/福岡市
一方で、高原さん自身は「ここは福岡市の南の玄関口だから、JR九州と同じ名前にはなるが『西鉄・南福岡駅』が良いのでは」と考えていたそうだ。「桜並木駅」としてスタートした今、「明るいイメージで、一番いい名前」と笑顔を見せる。
ビルの上に警報機!?
周辺は踏切による交通渋滞に、長く悩まされた場所でもある。新駅整備と並行し、2003年から行われてきた連続立体交差事業により、全19か所の踏切が姿を消した。 並木道と線路に面したビルには、知る人ぞ知る”不思議スポット”が誕生した。高架工事で撤去された踏切警報機が、屋上付近に設置されている。仕掛け人はビルを管理する白水清裕さん(43)だ。
使用されなくなり、ブルーシートで覆われた警報機。「生まれ育ったこの地に、かつて線路があった証しを残したい」という気持ちから、「譲ってほしい」と西鉄側に伝えた。無理だろうと期待はしていなかったが、相談していた高原さんの口添えもあり、希望がかなった。クレーンでつり上げてビルの上に設置したことで、高架上と同じ目線になり、警報機のそばを電車が走り抜ける光景が”復活”した。 「さすがに運転士さんはすぐ見つけたようです」と白水さん。乗客のほとんどは気づいていなかったようだが、SNSなどに投稿され、最近は車内から指をさして驚いたり、写真に収めたりする姿も見られるようだ。
地元住民がつくった花壇や季節の花々が癒やしを与えてくれる並木道。小雨交じりの雲の下、遊歩道を望遠レンズでのぞくと、日が照っていないにもかかわらず、木の影でしま模様が描かれていた。 まもなくセミが大合唱を始め、桜の時期とはひと味違う“にぎやかさ”に包まれる小道。緑の葉はやがて秋の色に染まり、落ち葉のまわりにガラス細工のような霜がつく冬へと――、住民たちが愛する「桜並木」の季節は移ろっていく。
読売新聞