「まだ熱い試合を見せたい」井上尚弥が前人未到の“２年連続”４団体王座統一の歴史的快挙！「４本のベルトを肩にかけたときは…」
前人未到と言える２年連続の偉業をやってのけた。 ボクシングの世界スーパーバンタム級の４団体王座統一戦が12月26日、東京・有明アリーナで行なわれ、WBC・WBO同級王者の井上尚弥（大橋）が、WBA・IBF同級王者のマーロン・タパレス（フィリピン）を10回１分２秒でKO撃破し、昨年のバンタム級に続く、世界主要４団体の王座統一に成功する歴史的快挙を果たした。 【動画】井上尚弥がタパレスをKO撃破！10回にダウンを奪取した衝撃の瞬間！ 序盤から有利に試合を進めたのは日本が誇る”モンスター”だった。 第４ラウンド残り30秒過ぎ、左フックがフィリピン人ボクサーの顔面をとらえると、難攻不落の２団体王者の足元がふらつき、井上は一気にラッシュ。タパレスはたまらず片膝をつき、井上が最初のダウンを奪った。のちにタパレスは「（パンチの）スピードが速くて、追いつけなかった」と称賛するほど、速くて重い一発だった。 ところが中盤以降はタパレスも井上のオフェンスに慣れ、鋭いパンチをかわし、鉄壁のガードでディフェンス。ときには左ストレート、アッパーなどで井上を脅かす場面もあり、粘り強さを発揮。試合は終盤へ突入した。 だが、蓄積されたダメージは着実にナイトメア（タパレスの愛称）の体をむしばんでいた。 迎えた10回、井上の戦慄の右ストレートがタパレスのテンプル（こめかみ）にクリーンヒット。フィリピン人王者が崩れ落ちると、再び立ち上がる力はもう残っておらず、無情のゴングが会場に鳴り響いた。この瞬間、30歳の日本人ファイターが史上２人目となる２階級での４団体王座統一を果たした。
試合後、タパレスは10回のダウンについて「イノウエのパンチが綺麗に決まったので、それが敗因だった」と冷静に分析。「あらためてナオヤ・イノウエはボクシングがうまい。本当にスピードに驚いた」と、『怪物』と称される井上の圧倒的強さに脱帽した。 一方の井上も、タパレスの驚異的な粘りと一発を秘めた攻撃力については「想定内」だったと評し、「ディフェンスが思ったよりすごくて、意外とパンチが当てられなかった感じで戦っていた」と、かなり苦戦を強いられたと明かした。 加えて、「（タパレスは）体重の重心も後ろで構えていたので、なかなかクリーンヒット、いいパンチを当てられなかった」と話し、判定も覚悟していたというが、「10ラウンドまでいったけど、結果こうしてKOで勝ててすごく良かった」と難敵を撃破し、黄金に輝く４本のベルトを手にできたことに安堵した。 ２階級での４団体統一は今年７月にスーパーライト級、ウエルター級でテレンス・クロフォード（米国）が達成して以来の快挙。しかも、２年連続だと、ボクシング史上初である。「１年前、皆さんに見せてもらった景色と似たような景色。自分がリング上で４本のベルトを肩にかけて終わった会場を見る雰囲気は感動的なものだったし、見せてくれたファンにも感謝している」と周りのサポートに謝辞すると、今後の目標を熱く語る。 「この４本のベルトをどうしていくかも考えるところだけど、どうなっても、まだ熱い試合を見せていきたい」 新たな伝説を築いたモンスター・井上尚弥の快進撃は、まだまだ続く。 取材・文●湯川泰佑輝（THE DIGEST編集部）
