西野ジャパンのパラグアイ戦勝利をどう評価すべきか?
前半からボランチの柴崎岳の縦パスが前線に入り、香川と乾との間でパス交換が起これば、右サイドの武藤は岡崎の近くに寄ってスルーパスを引き出した。 「あまりにイージーなシュートミスを連発していたので、ハーフタイムに、お前、スパイクの中に何か入っているんじゃないか、親指のあたりに何か入っているんじゃないか、と言った」と西野監督がジョークを飛ばしたように、乾のシュートミス、ドリブルミスがなければ、前半のうちにスコアを動かすことができていたはずだ。 日本の4ゴールはすべて後半に生まれたものだった。51分にドリブルで中央にカットインした乾がゴール右隅へ。63分には香川のパスから乾が同じようにゴール右隅へ。さらに71分、CKから相手のオウンゴールを誘うと、90+1分、その前に超決定機を外した香川にもゴールが生まれた。 後半は大迫勇也と岡崎の2トップもテストしただけでなく、この日出番のなかった吉田麻也が「ベンチでただ見ているだけじゃなくて、意識を共有しながら、こうじゃないか、ああじゃないか、と話し合って試合をみることができた」と、有意義な時間になったことを強調した。 ただし、この快勝は、ワールドカップでの成績を保証するものではない。 パラグアイは予選で敗退したチーム。しかも敗退決定後から若返りを図り、新しくチーム作りをスタートさせたばかり。日本にとって“スパーリングパートナー”で、ワールドカップ初戦の対戦相手、コロンビアとの実力差は天と地ほどある。 もっとも、そのことは選手も十分理解しているようだ。 この日、ミックスゾーンで10分以上喋り続けた香川の言葉のなかで、最も印象的だったのが、気の緩みを戒める言葉だった。 「やっぱり4年前も、こういう親善試合を勝ち抜いて、ちょっとやれるというところがあった。だから、もう一度引き締めて、課題を修正していい準備をしないといけない」 そう語った香川は「絶対に安心してはいけない」「ここからが大事」と繰り返した。 ここまで戦い方や戦術面について選手たちの話し合いによる解決に委ねていた西野朗監督にも変化が生まれているようだ。パラグアイ戦の前日、キャプテンの長谷部誠が明かす。 「監督は選手の考え方を聞いて、取り入れてくれて、実際ミーティングでもいろんな話し合いが出ている。選手の中でもサッカー観はそれぞれ違うから、違う意見が出る中で、今まではちょっとモヤっと、やってみようみたいな感覚だったんですけど、今はもう監督もしっかりと、いろんな意見は聞いてくれるんですけど、そこから『じゃあそうやってやろう』と言ってくれるようになって、ここにきてスパッとできている」 ワールドカップ初戦のコロンビア戦まであと7日――。レギュラーはスイス戦のメンバーなのか、パラグアイ戦のメンバーなのか、あるいはシャッフルするのか。スタメンの人選を含め、チームをどう仕上げていくか。西野監督の手腕が問われる。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)