中学校の芸能クラブが稽古に熱 戦場の恋を描く人形芝居を表現 三重県志摩市
志摩市の安乗(あのり)神社で14、15日、国重要無形民俗文化財「安乗の人形芝居」が上演される。14日は、市立東海中学校の「郷土芸能クラブ」の生徒18人が、戦場の恋を描いた演目「鎌倉三代記」を披露する。地域の伝統文化を受け継ごうと、文化財の保護団体「安乗人形芝居保存会」の指導を受け、稽古を重ねてきた。生徒たちは「観客に感動を届けられる素敵な舞台にしたい」と意欲をみせている。(新良雅司、写真も) 11日に安乗神社で行われた舞台稽古では、生徒たちが3人1組になり、重さ10キロ前後の人形を操った。 人形の顔の向きを上げたり下げたりして目線を変え、手足を細かく動かす。繊細な動作で喜怒哀楽を表現していく。三味線の演奏や、語りの練習にも熱が入っていた。「人形の足と胴を高く上げて」「もっとゆっくり台本を読んで」。練習に立ち会った保存会の会員7人が次々と助言した。 18人のクラブ員のうち、1年生が12人と3分の2を占める。3年生は2人、2年生は4人。人形を操るのが初めての生徒が多く、5月から毎週水曜日に、保存会員らの指導を受けながら腕を磨いてきた。 生徒たちが演じるのは、鎌倉三代記の「三浦之助母別れの段」。戦場で負傷して病気の母の元に戻った三浦之助と、母の看病に来ていた敵軍の大将の娘・時姫との恋模様が描かれている。舞台には3体の人形が登場する。時姫の頭部を操る仲野夏心部長(3年)は「三浦之助に愛を語るシーンの細かい動きをしっかり演じたい。練習は大変だが、まとまりのある公演にしたい」と話す。 抑揚や緩急を付けながら感情を込めて台本を読む「語り」は1年生の3人、物語の雰囲気を音で盛り上げる三味線は2年生1人が担当する。語り手の向井紗由季さん(1年)は「リズムをつけて読むのが難しいが、本番は観客の心に残る公演にしたい」、三味線の中井梁花さん(2年)は「語りと人形の動きに合わせて三味線を弾き、一体になった舞台を見せたい」と意気込んでいる。 保存会の口祐子副会長は「初めての子が多く、最初はどうなることかと思ったが、徐々に物語らしくなってきた。子供たちの努力を地元の人に見てもらいたい」と、来場を呼びかけている。 ◇ 14、15日はいずれも午後5時から保存会員が三番叟を上演した後、人形芝居は午後6時30分開演。14日は鎌倉三代記に続き、保存会員らが「生写朝顔話」と「壺坂観音霊験記」、15日は「伊達娘恋緋鹿子」と「傾城阿波の鳴門」を披露する。
安乗の人形芝居
安乗神社の秋季例大祭で奉納される人形浄瑠璃で、400年以上の歴史があるとされる。大正末期の不況と昭和の戦争で一時中断したが、1951年に地元住民が保存会を結成して復活させた。80年に国重要無形民俗文化財に指定された。人形を操る保存会員は20人。