「恥の上塗りだった」永守会長の後継者問題は一応解決、ニデックが始動した集団指導体制の行方
ニデックにとって長年の経営課題であった永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)の後継者問題が一応の決着をみた。今春、岸田光哉次期社長兼CEO(現副社長)を核とした集団指導体制が始動する。永守氏は今後も代表権を持ち、新設のグローバルグループ代表として同社の成長の要となるM&A(合併・買収)を主導しグループの精神的支柱として引き続き経営に関与しつつ、岸田体制をサポートする。繰り返された後継者問題は今度こそ解決するのか。成長戦略の肝となる車載事業の早期再建とともに注目される。(京都・新庄悠、同・小野太雅) 【一覧表】ニデックの社長遍歴と現在までの業績詳細
M&A関連、永守氏が担当を継続
岸田氏は前職のソニー(現ソニーグループ)で生産本部長やスマートフォン事業子会社社長などを務め、赤字だったスマホ事業の再建で手腕を振るった。2022年1月にニデックへ入社。成長の柱に位置付ける電気自動車(EV)向け駆動装置「イーアクスル」を含む車載事業を任され、欧州事業改革などを進めてきた。 前職では世代交代後の事業展開も経験している。「バトンを受け取ったサラリーマン経営者世代として苦労した経験をもとに、次の世代をどのように励ましてやっていくかは常に考えている」(岸田氏)という。そうして得た知見もニデックで発揮することが期待される。 岸田氏が次期社長へ就くのを機にニデックの経営トップ人事はシステム化される。社長の任期は4年間で、その後会長に4年間就き、計8年間経営に携わるサイクルを目指す。永守氏は「創業者は幅広い業務を夜も寝ずにやってきたが、これからは分担してやらないとできない。僕と同じやり方を理解しなくていい」と、岸田氏に対して助言。「部下へ仕事を落とし込み、組織を使ってもっと大きな会社にしていく集団指導体制」(永守氏)を推奨する。同体制は初めて社長職を禅譲した日産自動車出身の吉本浩之氏の時にも挑戦したが挫折した。だが、永守氏のモットーでもある「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」ことに最適解を見いだし「できるまでやる」と決めたようだ。 「50年頑張ってきたが、最後の方は恥の上塗りだった」。永守氏は後継者問題でつまずいたここ数年をこう自嘲した。後継候補として外部からスカウトした人材はいずれも退任。永守氏は「世の中にもっと素晴らしい経営者がいて、そのうちの一人を選べばいいと思っていた。みんな逃げるのが早い」と口惜しそうに話す。