1億円から10億円台、今注目の東京都心のリノベーションマンションとは
東京都心で特徴的なリノベーションマンションが増えている。中でもハイクラス層をターゲットにした高級リノベーションは三菱地所など大手不動産グループが力を入れ始めており、一棟まるごとをリノベーションした都内高級エリアの物件が出ているほか、電鉄系の不動産会社やデベロッパーなども参入して活気を見せている。 こうした動きの背景には、都心の物件は資産価値が高水準で長年にわたって維持されることや、日本の中古住宅の流通の割合が諸外国に比べて低く成長余地があること、1980年代後半から90年代初めのバブル期に大量供給された物件が大規模修繕の時期を迎えてリノベーション用の物件が出てきやすい、などの事情がある。新築並みの物件も多く、都心部の立地の良さが決め手となって選ばれているという。
東急不動産と両備ホールディングスが展開する高級ハイリノベーションマンション「マジェス元麻布ガーデンズ」はその一つだ。地下鉄・麻布十番駅からほど近く、もともと外国人向けの高級賃貸マンションだったものをリノベーションし、分譲用に売り出した。全部で6棟、総戸数は41だが、買い主の意向が反映されるため、仕様は一部屋ごとに異なる。 多くは3階までの高さの部屋だが、一部が4階、5階の部屋となる。まず外壁や共用部の改修を終えたのち、空いた部屋を大規模改装して順次、販売する。 価格帯は1億円台から10億円を超えるものまで様々だ。主な顧客は国内の富裕層で、一部は外国人なども含まれるという。 まだ広範な周知活動を行っていないにもかかわらず販売は順調で、6月だけでも数件の成約があったという。
マジェス元麻布ガーデンズのもう一つの特徴は建物全体でアート性を重視しているところである。街区内に備前焼の人間国宝として知られる伊勢崎淳氏と、20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチと共に石彫を手がけた石匠・和泉正敏氏のコラボ作品「大地の輝」が設けられている。アート作品を内包して、住む価値を追求しているほか、街区のシンボルにもなっている。 また一般的な分譲マンションと異なるのは、間取りや什器にいたるまで既製品的なイメージがなく、それぞれに個性がある点である。さらに9月には海外の著名デザイナーを起用した屋上のモデルルームがオープン予定で、さらなるオリジナリティを高めようとしている。マジェス元麻布ガーデンズで販売を担う三井不動産リアルティの担当者は「顧客の要望は多様化しており、自由に設計やデザインのオーダーができる点が売りとなる」と話す。 こうした高級リノベーションの動きは、これまで賃貸物件を扱っていた投資ファンドや海外のデベロッパーなども注目しており、今後、市場の一段の拡大が見込まれそうだ。 (3Nアソシエイツ)