柄本佑、道長が「この世をば」を詠むシーンは「雑念との戦い」
詠み方に関しては、ドラマの芸能考証を担当する友吉鶴心の指導を受けたというが、柄本は「あの……難しいですね」と苦戦した様子。「第36回で道長が妻の倫子(黒木華)の前でまひろに返歌を贈るシーンでも友吉先生に来ていただいてかなり練習をして、詠み方も教えていただいたのですが、望月の歌のときも来ていただきました。僕、ミュージカルで歌わせていただいた経験もあるんですけど、雑念がね……。良く歌いたいとかいう雑念が邪魔をする。それを友吉先生にお伝えしたら、先生もそれが一番難しいということをおっしゃっていました。まひろへの返歌もそうだったのですが、フラットに読むと逆に何か意図してしまうことがあったりするので、友吉先生の詠み方を真似て、しかるべきやり方でやっていたような気がします。あとは“ここまでは一気に詠んで、ここは止めない方がいいよ”といった具体的な指示を受けながらといった感じです」
道長が歌を詠んだのち、道長の周りに銀粉が舞うカットが映し出され、道長がまひろに視線を送る。このとき、道長はどのような思いだったのか……?
「正直、僕もよくわかってないです。ただ、あの日は宴のシーンとあって大人数だったこともあり、かなり撮影が押したんですよね。そのためわーって感じでやっていました。銀粉が降っていたのだけは覚えているんですけど。銀粉といえば黛さんなので。これは僕の発見というか解釈なんですけど、たびたび台本のト書きに書かれているまひろへの“万感の思い”という描写しかり、そういうときの道長は自信に溢れているというよりまひろに“ここから救い出してくれ”みたいな意味合いなんじゃないかという気がします。まひろに対しては強がりもせず、素の三郎(道長の幼名)であるっていうことが、多分今作においてはすごく大事だなと思っていたので。だから、僕としてはそんな意味合いでやっていたような気がします」
そうして最高権力者となる道長だが、柄本は「道長は、ある時点から本当に嫌だったんだろうなって思うんですよ。結局僕はそこに落ち着いたかな」と想像を巡らせる。