AI最新技術のロボティクス産業への融合が急加速 AI時代のロボット開発競争最前線
Boston DynamicsはヒューマノイドロボットAtlasを全電動に完全リニューアル
Project GR00Tの供給先の一つBoston Dynamicsは、30年以上の歴史を持つ老舗ロボティクス企業だが、この4月に製品ラインナップの大幅刷新を発表。11年のキャリアを持つ油圧式のヒューマノイドロボットAtlasを完全廃止し、新たに全電動バージョンをローンチする。 油圧式に比べ、電動モーターは安価で軽量かつ静穏性に優れ、機動性も良い。また、油圧式と違って液漏れや修理の必要性も低いので、より実用的な商用展開に適しているのだ。Boston DynamicsのAtlasモデルチェンジは、現場においてヒューマノイドロボットが汎用段階に入ったという証拠かもしれない。 新しい電動Atlasは強度が上がり動きの幅も広がったため、幅広い業界での活躍が見込まれている。まずはBoston Dynamicsの親会社でもあるヒュンダイの自動車生産現場で稼働する予定だ。
ロボティクススタートアップの大規模資金調達も白熱
AI×ロボティクスへの関心の高まりにより、若きロボティクススタートアップ界隈の動きも活性化。この数か月で大規模な資金調達の発表が相次いでいる。 カリフォルニアのロボティクススタートアップFigureは2月に6億7,500万ドルの資金調達を発表。同時にOpenAIとのコラボレーションも発表し、新世代のAIモデルヒューマノイドロボットの商業開発を加速させるとした。 同じくOpenAIを後ろ盾に持つノルウェーのロボティクススタートアップ1X Technologiesも1月に1億ドルのシリーズBを発表。出資者リストにはサムソンをはじめとするビッグネームが並ぶ。
Cobotは確実性と低コスト重視の独自アプローチでロボット開発
元アマゾンのロボティクス担当VP、ブラッド・ポーター氏が2022年に創業したCobot (Collaborative Robotics)も4月に1億ドルのシリーズBを発表。 Cobotが開発中なのは独自の非ヒューマノイド型ロボット。業界が高性能で高価なヒューマノイドロボット開発にしのぎを削るのとは対照的に、確実性と低コストを重視したロボット開発を行い、RaaS(Robots-As-A-Service)モデルで運用すると明言している。 とはいえ、CobotもAI技術の取り込みを疎かにしているわけではない。開発中のロボットの詳細はまだ明らかにされていないが、既にLLMを使用した指令系統はできており、Nvidiaの複数のシステムも搭載されているとのこと。Cobotのような現実的なアプローチが、商業化においては他社の高度なロボットたちを凌駕する未来もあるかもしれない。 AIドリブンのロボティクス業界勢力図は混沌としていて、どこが圧倒的勝者となるか、大規模商業化で先行するかはまだ見えない。しかし、この数カ月でAIとロボットの融合が急加速したことは確かで、私たちは今、ロボティクス新時代の幕開けに立ち会っていることは間違いないだろう。
文:平島聡子 /編集:岡徳之(Livit)