[山口県]「関鯨丸」期待背負い船出 悲願の新捕鯨母船、下関市で初出漁式
国産の捕鯨母船建造は73年ぶり
昨シーズンで引退した「日新丸」に代わる新しい捕鯨母船として捕鯨会社の共同船舶(東京)が発注し、下関市内で建造された「関鯨(かんげい)丸」の操業開始を祝う市主催の初出漁式が21日、下関市岬之町のふ頭岸壁であった。水産庁が商業捕鯨の対象に大型のナガスクジラを追加する方針を示し、7月にも正式決定する見通しであることから、関係者らは悲願の新捕鯨母船の船出とナガスクジラの捕獲という二重の期待を込めながら出港を見送った。 3月に完成した関鯨丸は総トン数9299トン、全長112・6メートル、幅21メートル。沖合母船式捕鯨の中核としての役割を担う。捕獲したクジラを船内に引き揚げるスリップウエイ方式の揚鯨設備は、斜面の角度を日新丸の時の35度から18度に緩やかにすることで70トン級の大型のナガスクジラでも容易にウインチで引き揚げられるようにした。 今季の捕獲枠はニタリクジラ187頭、イワシクジラ25頭。下関を出港した後、23日に東京・有明ふ頭に寄港して関係者向けの見学会を開いてから25日に東北や北海道沖に向けて再び出港し、捕鯨船「第3勇新丸」と共に日本の排他的経済水域(EEZ)内の太平洋側で操業に当たる。12月中旬には母港の下関に戻って来る予定だ。 初出漁式には関係者ら約100人が出席。前田晋太郎市長が「最新の機能を備えた一方、やり方が変わることで不安も若干あるだろうが、これまでの経験に自信を持って臨機応変に対応して目標頭数を獲得し、下関に帰って来て」、共同船舶の所英樹社長が「解禁されればナガスクジラの生肉を日本で初めて上場してもらうことになると思うので楽しみにしてほしい。全社一丸となって、クジラの文化を未来永劫(えいごう)続けていく覚悟で出漁する」とあいさつした。近くの名池保育園の園児16人が歌や踊りで乗組員らを激励し、「大きなクジラを捕まえてきてね」「応援しています」などとメッセージを読み上げて野島茂船長に手渡した。 野島船長は「日新丸よりも操縦性能が向上し、小回りが利くようになった。安全に操業して無事に帰ってきたい。ナガスクジラがまた捕獲できるかもしれないので期待している」と意気込みを語った。 日新丸は30年以上にわたって日本の捕鯨を支えてきたが、老朽化のため関鯨丸にバトンタッチした。国産の捕鯨母船建造は73年ぶり。