佐々木朗希のメジャー挑戦批判に“2つの誤解”…あるMLBスカウトの本音「大学生の1位指名と同じだ」 獲得に乗り出す球団の“現実的なプラン”
メジャー挑戦に“3つのネガティブな意見”
さて、佐々木のメジャー挑戦を前にし、多くの日米の球界関係者からネガティブな意見を耳にした。集約すれば、以下のようになる。 :日本で1年間、ローテーションを守ったことが一度もない。体力的にメジャーではまだ厳しい。 :体が出来あがっていない。メジャーの過酷な日程で投げれば、大きな怪我につながる。 :まだ日本球界、ロッテ球団への責任を果たしたとは言えない。 さまざまな意見での時期尚早論。3つ目の『責任』に関しては、あって致し方なしの論議とも感じるが、『体力、耐久』に関しては、少し勘違いをしている関係者が多いと感じる。 確かに佐々木は22年の20先発、129回1/3が最多であり、100イニングを超えたのは、今季18先発での111回を含め、わずか2回しかない。規定投球回数にも一度も達していない事実は、体力面での不安を指摘されても仕方ない。しかも、メジャーは6人ローテーションでも中5日の登板間隔を強いられ、通常の5人ならば中4日となる。現在、メジャーに在籍する日本人投手でも、中4日、中5日で1年間ローテーションを守れる先発投手は、ダルビッシュ有と菊池雄星の2投手だけの過酷な世界。佐々木にその耐久性があるとは思えない。 だが、これらの問題は、いずれも来季から佐々木に先発ローテーション投手として、1年間投げ抜くことを求める場合に起こる問題だ。果たして、メジャー各球団は今の佐々木にそんなことを求めているのか。答えは『NO』だ。
MLB球団スカウト「佐々木はまだ23歳」
ナ・リーグのある球団スカウトは言った。 「佐々木はまだ23歳。米国で考えれば、ドラフト1位で大学生投手を指名することと同じ。超有望なナンバーワン・プロスペクトを加えることと同じだ」 23年度の全米ドラフト全体1位指名で今季メジャーデビューを果たしたパイレーツのポール・スキーンズ(22)は、今年の5月11日にメジャーデビューし、23先発で133回を投げ、11勝3敗、防御率1.96をマーク。新人王の有力候補にあがっている。ポテンシャル的には即戦力であったにも関わらず、彼もまた23年はマイナーで基礎体力、技術を養い、24年も傘下3Aインディアナポリスで7試合、27回1/3のマウンドを経てからメジャーに上がった。 米国ではたとえ実力があっても、段階的にレベルを上げ、投球回数を増やし、肩・肘を含めた体の耐久性を養っていく。それが普通だ。ワイン同様に“若手選手は充分に寝かせて育てる”という言葉もある。
では、最も現実的な“育成プラン”は?
先のスカウトが明かしたように、佐々木の年齢、日本での登板間隔やイニング実数を考えれば、1年目からのフル回転など、求めるわけもない。「プロスペクトを加える」の意味は、“即戦力を加える”ではない。 どの球団でも育成プランはA、B、Cと様々用意するだろう。最も現実味があるプランは、1年目はメジャーで90回、2年目は120回と段階的にイニングを増やし、3年目で162回の規定投球回数をクリアする。それが現状での『23歳佐々木朗希の米国流育成法』だろう。 焦らず、ゆっくり。熟成の時を待ちながら、大きく花を咲かせる。佐々木朗希の未来を考えれば、時期尚早なメジャー移籍とは思えない。
(「メジャーリーグPRESS」笹田幸嗣 = 文)
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