熊本・大津高、サッカー〝日本一〟3年前の完敗を糧に成長【記者ノート】
サッカーの熊本・大津高が、高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルを制して日本一の栄冠をつかんだ。過去の全国大会で何度も優勝候補と目されながら挫折を繰り返したチームが、ついに高い壁を乗り越えた。 熊本のスポーツ
2022年の1月10日、大津は全国高校サッカー選手権で初の決勝に臨んだ。攻守に好選手をそろえ、東福岡や前橋育英(群馬)などの強豪を撃破し、東京・国立競技場に堂々と乗り込んだ。 相手は4年連続で決勝に進んだ青森山田。J1のFC東京に内定していた松木玖生らタレントを擁し、高校サッカー界の〝キング〟だった。球際で競り負けた大津は、敵陣深くにほとんど攻め込むことができず、0-4。シュートを1本も打たせてもらえない屈辱的な敗戦だった。 失点の度にぼうぜんとする選手たち。その光景を記者席から見て「日本一の頂はこんなに高いのか」と痛感させられた。プロ、アマを通じてさまざまな競技を取材してきた中で忘れられない一戦となった。 あれから3年近く。埼玉スタジアムのピッチに立った大津イレブンはたくましく、輝いて見えた。激戦の東地区を勝ち抜いた横浜FCユースに対して球際で一歩も引かず、技術や組織力でも上回った。
試合後の記者会見。山城朋大監督に22年の青森山田戦について水を向けてみた。「完敗でした。しかし、その後のフィジカル強化に取り組むきっかけとなった」。指揮官は、ライバルとの差を埋める努力がチームのレベルを上げる原動力になったと明かした。 今年のチームも、夏の全国高校総体1回戦で1-2と逆転負けしていた。プレミアリーグファイナルでは、前半の1点で満足せずに攻め続けて3-0。五嶋夏生主将は「夏の敗戦があったから追加点にこだわった」と振り返った。 敗戦から学んで次への糧とする-。スポーツの世界で当たり前のように語られるフレーズだが、「言うは易く行うは難し」だ。大津の選手たちは何代も重ねてそれを愚直に実践し、悲願を成就させた。(野方信助)