「アハモ」店頭で機種変対応…ドコモ、接客テコ入れの背景事情
NTTドコモが店頭での顧客対応をテコ入れする。オンライン申し込み専用の携帯通信料金プラン「ahamo(アハモ)」契約者がドコモショップや家電量販店など計約3800店舗で機種変更できる取り組みを開始。量販店のスタッフを増やして顧客満足度を上げる施策も始めた。携帯端末買い替えサイクルの長期化、非通信サービスを含むポイント経済圏の競争激化という携帯業界の変化に対応し、シェア下落傾向に歯止めをかける。(編集委員・水嶋真人) 【グラフ】ドコモ・au・ソフトバンク・楽天…契約者シェアの推移 「アハモ提供から3年がたち、機種変更の時期を迎える契約者が徐々に増えている」。ドコモahamo推進室の田端孝平担当課長は、アハモ契約者が店頭で機種変更できるキャンペーン「ahamo機種変更フェア」を7月末に始めた要因をこう説明する。 21年3月に投入したアハモは、新規契約や手続きをオンラインのみで受け付けることにより、月間データ通信量上限20ギガバイト(ギガは10億)で月額2970円(消費税込み)の低料金を実現した。契約数が23年6月に500万を超えるなど「非常に多くの顧客に好評で、契約数も順調に増えている」(田端課長)。 一方、端末価格の上昇が続いていることから「実店舗で機種変更したいニーズが一定程度あった」(同)。店頭での機種変更により、アハモ契約者が機種変更時に他社携帯通信会社へ乗り換えることを防ぐ。 もう一つの狙いがアハモ契約者に対し、ドコモのクレジットカード「dカード」やスマートフォン決済「d払い」など自社の非通信サービスを組み合わせた提案を店頭で説明できる機会を増やすことだ。 ドコモの4―6月期のARPU(利用者1人当たりの平均月間収入)は前年同期比80円減の3910円に下落した。低料金のアハモやイルモの通信料収入だけではARPUを向上できない。自社の金融決済サービスの利用に応じてdポイントの還元率が高まる新しい料金プラン「エクシモ・ポイ活」の紹介などドコモグループの複数のサービス利用で得られる“お得感”を店頭で理解してもらい、ARPU上昇を目指す。 この一環として、同一フロアで競合他社としのぎを削る量販店のスタッフも増強する。ドコモチャネル営業室の新栄吉光量販戦略担当課長は「MNP(他社からの乗り換え)を取り合うのではなく、顧客一人ひとりへの接点をこれまでよりも多く持つことで提案力を高めたい」と話す。d払いなどの金融決済サービスのほか、光回線などドコモ経済圏を構成するサービスを複合的に提案し、顧客基盤の強化につなげる。 総務省がまとめた移動系通信の業者別シェアでドコモは下落傾向が続いている。23年末時点のシェアは前年同月末比1・2ポイント減の34・9%と主要3社で最も下落幅が大きかった。「そろそろ限界だと思う」(島田明NTT社長)状況の中、店頭接客のテコ入れをシェア底打ちにつなげるべく、6月に就任した前田義晃ドコモ社長の手腕が試される。