【タクシー】目的地より数メートル先で停車→運賃上乗せ 違法じゃないの? 弁護士に聞く
忘年会や新年会、年末年始などイベント事が多い12月と1月はタクシーの利用が増える時期とされています。タクシーを利用していて、目的地として交差点やコンビニなどを伝えたのにも関わらず、“わざと”目的地の少し先で停める運転手もいたりして、メーターが回り、運賃を高く請求されるなどした経験がある人もいると思います。そこで、佐藤みのり法律事務所の弁護士・佐藤みのりさんに、こうした請求に問題がないのか聞いてみました。 【意外と知らない】タクシーで上司をどこに座らせる? ビジネスシーンでの「上座&下座」 徹底解説!
交差点など、法律で駐停車が禁止されている場所もある
Q.タクシーの運転手が明確に禁止されていることはあるのでしょうか。 佐藤さん「タクシーの運転手は、道路運送法13条により、正当な理由のない乗車拒否が法律により禁止されており、違反すると100万円以下の罰金に処される可能性があります(道路運送法98条6号)」 Q.料金メーターが上がる直前で目的地に到着しそうな時、止まるように指示をしたのに数メートルほど進んで、料金メーターが上がってから停止した場合、法的に問題はないのでしょうか。 佐藤さん「“タクシーに乗る”ということは、運転手と乗客との間で『旅客運送契約』(商法589条)を結ぶということになります。契約を結ぶことで、運転手には、安全に最善ルート、方法で目的地まで乗客を運送する義務が生じ、乗客には運賃を支払う義務などが生じます。 乗客が止まるよう指定した場所で安全に停止することができるのに、あえて数メートル進んで、料金メーターが上がってから停止し、その金額を請求する行為は契約違反にあたると考えられます。その場合、乗客は、料金メーターが上がる前の金額を支払えば、契約上の義務を果たしたことになるでしょう。 なお、交差点など、法律によって、駐停車が禁止されている場所があります(道路交通法44条)。乗客がそうした場所に停止するよう指示したとしても、運転手は停止することができないため、安全に停止できる場所まで進んでから停止することになります。このようなケースでは、料金メーターが上がってしまったとしても、乗客は、上がった後の金額を支払う義務があります」 Q.SNSでは、目的地に近づくと急に速度を落として走るなど「目的地の前で料金メーターを上げようと調整しているのだろうか?」と疑念を抱かれる運転手もいるとのことです。こうした行為は法的に問題あるのでしょうか。 佐藤さん「先述したように、運転手には、安全に最善のルート、方法で目的地まで乗客を運送する義務があり、わざと極端にスピードを落とし、到着を遅らせるようなことがあれば、契約違反になる可能性があります。 しかし、一般に、目的地付近で速度を落としたとしても、料金メーターが上がりやすくなることはありません。通常、タクシーの運賃は、加算距離が増すごとに運賃が加算されます。時間が運賃に影響を与える場合もあり得ますが、信号待ちや渋滞などにより、走行速度が10キロメートル以下になった場合や、乗客の都合により、タクシーを待機させる場合に適用され、目的地付近で一時的に少し速度を落としたとしても、料金に影響を与えることはあまりないでしょう。運転手としては、早く次のお客さんを乗せたいと考えるのが一般的であり、料金メーターを上げるために、目的地付近であえてスピードを落とすことは考えにくいのではないかと思います。 目的地を間違えないためなど、正当な理由で速度を落とし走行したとしても、契約上問題はないため、乗客は請求された金額を支払う必要があります」 Q.タクシーの中は運転手と乗客だけの、いわば密室状態です。仮に乗客が「わざと料金を上げた」と訴えても運転手が否定すれば、水掛け論になりかねません。乗客はどのようにして、自らの主張の正当性を告げればいいのでしょうか。 佐藤さん「わざと料金を上げたのか、正当な理由があったのか、微妙なケースも多いので、気になる点があれば、まずは運転手に質問してみましょう。 もし、運転手から説明を受けても納得いかない場合は、タクシーに取り付けられたドライブレコーダーなどの情報により、運転状況を客観的に明らかにできることがあるので、タクシー会社に問い合わせてみるのもよいのではないでしょうか」
オトナンサー編集部