明るさや寿命だけじゃない! ヘッドライトの進化はトラックの「顔のデザイン」まで変えていた
トラックの見た目に大きな影響を与えるヘッドライト
トラックがフルモデルチェンジやマイナーチェンジをすると、フロントデザインの印象が大きく変わることがある。これは、トラックドライバーにとっては大きな関心ごとだといえよう。デザインが変化する要因はさまざまだが、近年はその変化にヘッドライトの形状が影響したといわれている。 【写真】ケンメリも2000GTも丸! 印象的な丸型テールのクルマたち(全9枚) トラックのフロントの形状は四角い平面がベースになっており、そこにフロントガラス/グリル/バンパー/ミラー/照明類などが配置される。これらは必須アイテムであると同時に、取り付ける場所もほぼ決まっている。このなかではグリルがデザインの変化をもっともつけやすく、車幅灯・ウインカー・フォグランプは配置の自由度が高い。ヘッドライトもある程度配置の自由度はあるものの、ほかの照明類とは違って形状が固定される傾向にあるのだ。 ヘッドライトが電気で点灯するシステムなった当初は、白熱球タイプのシールドビームが使用されていた。これは光源であるフィラメントと反射板・レンズを一体化したもので、2灯タイプ(ハイ/ロー一体型)と4灯タイプ(ハイ/ロー分離型)が存在した。デザインは大きさが統一された丸型と四角型で、ほとんどの車両がいずれかのタイプを採用していたのだ。そのため、フロントデザインは大きく制限を受けていたのである。 その後、ハロゲンランプが登場したことでヘッドライトの性能が大きく向上した。このランプは、電球を取り替える仕様になっていたためにレンズや反射板と分離され、それらは製造ラインで車両に取り付けられるようになった。 これによりヘッドライトの形状の自由度は増したが、レンズや反射板は相応の大きさが必要であったため、フロントデザインにおいてヘッドライトの存在感は、相変わらず大きかったといえる。
現在トラックのヘッドライトはLEDが主流
次に登場したのが、ディスチャージランプ(HIDランプ)だ。フィラメントをもたずに発光し、白色や青色系の明るい光を遠くまで届かせることができる。丸く小さなレンズを使用するために、ヘッドライトの小型化が可能になって、フロントデザインに大きな変化をもたらした。 消費電力が小さい・発熱量が低い・長寿命といった長所もあるが、発光ユニットが必要なことや、比較的高価であること、さらに蛍光灯のような点灯の仕方をするために、パッシングに不向きなどといった欠点がある。結果、ハロゲンランプにとってかわるというまでには至らなかった。 そして現在、主流になりつつあるのがLEDヘッドライトである。長らく発熱・価格・光量が普及のネックになっていたが、これらに解決のめどが立って採用する車両が増加している。消費電力が小さく長寿命であることに加えて、たいへん明るいという特徴をもつ。ハロゲンランプ同様に、既存ユニットのランプを交換するだけで使用できるものも多く、ハロゲンランプから交換するドライバーも多い。このとき、車両に電球切れのセンサーがついていると誤作動することがある。 ディスチャージランプは、ヘッドライトの形状として小さくすることに成功したが、基本的には丸型になる。これに対してLEDヘッドライトは丸型にする必要性がない。近年、乗用車に薄めのヘッドライトが増えたのは、LED化が進んだことによる。車幅灯やウィンカーも小型化が可能になり、ヘッドライトと一体化したデザインが増加したことで、トラックのフロントイメージにも変化が見られるようになったのだ。 現在、LEDをしのぐ光源の開発は発表されていないので、当面はその普及が進められるだろう。LEDは複数の光源を使用するので、将来はこれらを道路環境や走行条件に合わせて、AIなどで制御することができるようになると考えられる。 法律が緩和されれば、ヘッドライトの点滅でメッセージを発信するなどといったことも、できるようになるかもしれない。
トラック魂編集部