【SHO-BLUE】大谷翔平に会いに行ったらドジャースタジアムツアーもいかが?
<SHO-BLUE> ドジャース大谷翔平投手(30)がワールドシリーズ優勝を決めた直後「シーズン中から遠いところ、球場に応援に来てもらったり、本当に声援が力になった」と語った。地区優勝直前で盛り上がる9月下旬、大谷がプレーする本拠地ドジャースタジアムに記者が潜入。今季から始まった「日本語ガイド付き球場ツアー」に参加した。メジャーで3番目に古い球場の歴史を学べ、うんちくも知ることができた。足を運んで、来季の大谷に声援を送ってみてはいかが。 ◇ ◇ ◇ ドジャースタジアムの日本語のツアーは月、水、金、日曜の午前10時30分と午後0時30分の2回行われている。25ドル(約3750円)の入場券は紙のチケットではなく、電子メールで届く。メールアドレスがない人、米国では受信不可能な人は、「この人は支払い済み」と職員同士で受け渡す。無料の球場Wi-Fiも飛んでいる。球場内はキャッシュレス。現金しか持っていない人は、無料でデビットカードがつくれる。 遠くにハリウッドサインが見渡せる、9階がスタート地点だ。元々は山だった場所を切り崩して造成したスタジアム。頂上地点から出発し、62年の開場当初から使われる年代物の53人乗りエレベーターで降りていく。古いが、年2度は点検しているから安全だと力説される。大谷も毎試合乗るという。 5階の記者席に入る。記者は毎日使っていたが、ファンには新鮮だろう。かなり高い位置だが、全体が見渡せる。すぐ横で行われる、ディーター・ルールさんによる生オルガン演奏は、全米で今や10球場だけ。価格は変動するが、安い時は1万ドル(約150万円)で借りられるというスイートルームの前には、歴代の帽子の絵がずらりと描かれている。「ドジャーブルー」の青と白が基調だが、1937年だけは緑。「弱かったから説」が有力だが、理由は不明だという。 1階に降りると、ゴールドグラブ賞のグラブ、シルバースラッガー賞のバット、MVPやサイ・ヤング賞、新人王の盾などが飾ってある一角に移る。もちろん、95年新人王の野茂英雄のものもある。ここまではレプリカ(本物は選手が保有)なのだが、ワールドシリーズ制覇のトロフィーは実物。ただし、優勝は今回で8度目なのだが、81年以降の分しかない。当初はバットが優勝賞品だった。他の競技を参考に、1967年からトロフィーが授与されるようになったのだ。 バックネット裏の「ダッグアウトクラブ」というビュッフェ料理が食べられる専用スペースには、81年に新人王&サイ・ヤング賞を史上唯一同時受賞し、先月22日に63歳で死去したフェルナンド・バレンズエラ氏の絵が飾ってある。メキシコ出身のレジェンド左腕は、球団にとって、成績以上に活躍が意味を持ったことを知る。 球場の建築前、このチャベス・ラビーン地区にはメキシコ系の移民が多く住んでいた。最終的に強制移住させられたため、ド軍はニューヨークからの移転直後、ラテン系の市民から嫌われていた。だが、弱冠20歳のメキシコ人左腕の活躍で「フェルナンド・マニア」と呼ばれるファンが大幅に増えたのだ。95年には野茂が入団。同じように大量の日本人ファンが応援に押し寄せ、米国人ファンとともに「野茂マニア」と呼ばれた。ビュッフェには、野茂の移籍当時の写真とメッセージも飾られている。 スタンドに移動すると、三塁側のドジャースベンチのすぐ横に出る。ここには共同オーナーのマジック・ジョンソン氏の専用座席がある。元NBAのスターで背が高いので、後ろの観客のため、少し掘り下げられている。この後、通常ならドジャースのベンチに入れる。記者がツアー参加した日は、たまたまイベント開催中で入れなかった。その代わりに、日米野球で来日した当時のグッズ、野茂や大谷、山本の写真やユニホームが飾ってあるコーナーを案内された。 75分間のツアーは日本人8人が交代でガイドを務める。非常勤で前職引退後に始めた人や、ハリウッドが近いため俳優の卵もいる。大谷らの影響で定員60人弱の日本語ツアーは満員になるほどの大人気。やむなく英語やスペイン語のツアーに参加する人もいるという。ガイドの北本けいさんは「参加者のノリを見ながら言うことを毎日変えてます」と笑いを誘う工夫をしている。渡米した際は、試合前にぜひ参加を勧める。【斎藤直樹】 ■名物オルガン奏者は超努力家 今季は日本の曲も10曲 ドジャースタジアムの名物といえば、オルガン奏者ディーター・ルールさん(55)もその1人。ドジャースの攻撃の合間やイニング間に盛り上げる曲を演奏し、ファンを楽しませている。大谷が加入した今季は日本の曲も多く演奏し話題に。演奏するようになったきっかけや習得方法を聞いてみた。 「日本のファンが多く来場するだろうということで、なじみのある曲で楽しんでもらいたいという思いが開幕前からありました。球場に来ている何人かの日本人メディア関係者にどんな曲がいいか意見を聞き、レパートリーに加えました」 今季、披露した日本の楽曲はゴジラのテーマ、進撃の巨人の主題歌・紅蓮の弓矢、美少女戦士セーラームーンのテーマ、呪術廻戦のテーマ、話題になったテレビドラマ「VIVANT」のテーマ曲など。「新たに加えた楽曲は10曲くらいはあるかもしれない。楽譜はないので、動画サイトで曲を探して耳で聞いて練習しました」という。80年代から北米4大スポーツの試合やアテネ、ソチなど多くの五輪でも演奏したプロの中のプロは、大変な努力家でもあった。 楽曲に多く触れるうちに日本に興味を持つようになったというルールさん。「美しい国と聞いているし、文化に興味がある。ぜひ行ってみたい。来季は日本開幕ですが、球団に連れて行ってもらえることを願っています」と目を輝かせていた。【水次祥子】 ◆ドジャースタジアム 1962年開場。両翼100・6メートル、中堅120・4メートルで、米では珍しい左右対称の天然芝球場。フェンスは左中間から右中間が2・4メートル。両翼が1・2メートル。観客席はメジャー最多5万6000席。駐車場は1万6000台分。住所は専属実況アナウンサーにちなんだ、ロサンゼルス市ビン・スカリー通り1000。