寝ている間に脳は勝手に学習する。暮らしの質が上がる眠りの話【前編】(専門家が監修)
寝不足や徹夜がパフォーマンスを下げるように、睡眠と健康は密接に関係している。眠りがカラダに及ぼす影響を知れば、睡眠時間を工夫したり時差ボケ対策を行うことも可能だ。前編では、免疫やパフォーマンスに対する寝不足の影響を科学的に解説。賢く自分の睡眠をコントロールしよう。[取材協力・監修/櫻井武(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構副機構長)]
教えてくれた人:櫻井武さん
さくらい・たけし/筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)教授。医師、医学博士。1998年、覚醒を制御する神経ペプチド・オレキシンを発見。現在は人工冬眠の研究を手がける。著書に『睡眠の科学』(講談社ブルーバックス)など。
寝不足が続くと免疫力が落ちて風邪をひきやすい
多少睡眠時間が削られても自分は大丈夫。だるさや疲れを感じることはないし仕事のパフォーマンスが下がることもない。確かに1日や2日であればカラダに何の異変も起こらないかもしれない。しかし、数週間、数か月と多忙による睡眠不足が続いた後、風邪をひいたという経験はないだろうか? 睡眠時間と免疫力の関係は睡眠研究の世界ではよく知られた話。睡眠不足で風邪の罹患率が上がるという報告も数多くある。 「そのメカニズムに大きく寄与しているのは自律神経のバランスです。寝不足の状態で交感神経が強く興奮するとアドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンが分泌されてそれらが免疫細胞の機能を低下させます。交感神経は一時的に生体の機能を高めますが、反面、カラダに無理を強いて危機的局面に対応させるシステムなのです」(筑波大学・櫻井先生) ただでさえストレスフルな現代人は交感神経をドライブさせがち。そのうえ寝不足では免疫力はガタ落ち。ぐっすり眠ってカラダを労る副交感神経を優位にさせることが、感染症を寄せつけない秘訣だ。
成人の睡眠時間・睡眠休養感と死亡リスク
睡眠時間が5.5時間以上6.9時間未満で睡眠休養感が「ある」という人の死亡リスクを基準とすると、睡眠時間が5.5時間未満の人は休養感ありなしにかかわらずリスクが上がり、6.9時間以上の人はリスクが低かった。