子どものためだけじゃない、シニア向けの社会科見学やツアーが続々
「社会科見学」といえば小・中学生の自由研究のイメージですが、近年、国会議事堂や官庁、企業の博物館などの見学ツアーがシニア層に静かな人気となっています。ツアー会社などの日帰りプランだけでなく、町内会単位で独自に地元企業の博物館などを見学する姿も目立つといい、ツアー提供会社は「海外や温泉旅行をひととおり経験したアクティブシニアが、ちょっと勉強してみようという感覚で参加しているのでは」と話しています。 ツアー提供会社「ぽけかる倶楽部」(東京)は「大人の社会見学・工場見学」プランが人気商品となっており、中でも衆議院の見学ツアーは人気ナンバー1のロングヒット企画。国会議事堂近くの駅に現地集合し、衆議院の本会議場や憲政会館などを見学した後、近くのホテルでランチバイキングを楽しむプランです。参加費約6000円、4時間弱で気軽に体験できるとあって50代以上のシニア層が参加者の中心といいます。
同社では「月数回ツアーを設定しているが、シニア層などの4-5人グループなどが多く、すぐに予約が埋まる。選挙の時などは特に注目されます」。同社では中央官庁や造幣局のほか、火力発電所や牛乳、しょうゆなどの工場をめぐるバスツアーなども企画しており、今後も社会見学のラインアップを充実する考えです。 東海旅客鉄道(JR東海)が2011年に開館した「リニア・鉄道館」(名古屋市、入館料大人1000円)。0系など東海道新幹線で活躍した車両や山梨リニア実験線で走った超伝導リニア、戦前の蒸気機関車など40両近い車両が展示されているほか、新幹線のシミュレーター、鉄道ジオラマなども体感できる人気企業展示館です。年間約60万人が来場するといいますが、同館では「30-~40人単位のシニア層がバスなどに乗り団体で参加することが多い。特に春、秋の気候のよい時期の来場が目立つ」と話しています。
江崎グリコの歴史などがたどれる「江崎記念館」(大阪市)は昭和47年の創立50周年記念事業として設立。「以前は近隣学校の社会科見学などが中心だったが、最近はシニア層の来場が増えている。町内会単位で誘い合い、団体見学するケースもある」といいます。創業時にグリコのキャラメルを練ったというしゃもじや、大正期に使った真空釜など過去の工具・機械や、歴代のグリコキャラメルのおもちゃ(オマケ)、昭和初期のグリコの自動販売機などが常設展示されているほか、今年6代目がお披露目になった大阪・道頓堀の「グリコの看板」(ネオンサイン)の歴代レプリカも11月末まで特別展示されていました。入場無料、月~金曜は要予約ですが、第1・3土曜は予約なしで自由見学できます。 最近、終戦直後に生まれた「団塊の世代」が定年を次々迎え、経済に影響を与えているといわれていますが、 これらの世代は従来の高齢者のイメージとは異なり、活動的で、家電やレジャーなどへの消費意欲も旺盛なことから「アクティブシニア」とも呼ばれます。このため旅行業界では資金にも余裕のあるアクティブシニアの取り込みを狙い、豪華でゆったりとしたプラン提案に力を入れていますが、その一方で、知的好奇心をくすぐる社会見学系ツアー展開も拡大しそうです。