アフリカで「アルビノ」を狙った殺人が多発 その背景にあるものは?
アフリカのマラウイをはじめとする数か国で、先天性色素欠乏症のアルビノの人々が相次いで殺害される事件が多発しています。アムネスティ・インターナショナルは2014年11月以降にマラウイで少なくとも18人のアルビノが襲撃によって殺害され、拉致されたまま行方不明になったアルビノも5人以上いると指摘。地元警察は対応の遅さを批判されていますが、アルビノを狙った犯罪にはマラウイ独特の事情も存在し、実際にはもっと多くの犠牲者がいるのではという指摘もあります。なぜ、アルビノの人々が襲われるのでしょうか? 【図】ウガンダで同性愛厳罰化 なぜアフリカは同性愛に厳しい?
皮膚や毛髪などの色素が欠乏する疾患
マラウイという国をご存知でしょうか? アフリカ南東部に位置し、北海道の約1.5倍の土地に1650万人が暮らしています。日本にはあまり馴染みのないマラウイですが、医療がそれほど整備されておらず、国民の平均年齢は52歳。また、HIV感染者も多く、約100万人のマラウイ国民がHIVに感染しているというデータもあります。 国民の多くは農業に従事しているものの、近年は干ばつなどの影響によって収穫量が減少。国連世界食糧計画(WFP)のからの援助なしではやっていけないのが実情です。世界銀行が発表したデータによると、マラウイの年間所得の平均は約790ドル。世界最貧国の1つです。マラウイよりも平均所得の低い国は、コンゴ民主共和国や中央アフリカ共和国など、僅か4か国のみとなります。
そのマラウイでこの数年、深刻な社会問題になっているのが、先天性色素欠乏症のアルビノの人々 を狙った襲撃と殺害で、マラウイ南部地域を管轄とする警察の所長は地元メディアに対し、「2日もしないうちに、新たなアルビノ殺害のニュースが飛び込んでくる」と、急増するアルビノを狙った事件の対応に頭を抱えています。アルビノは全身の皮膚や毛髪、眼底網膜の色素が欠乏する疾患で、人種や性別に関係なく、世界中に一定の比率で存在します。アルビノの人権問題を専門に扱う国連の独立調査官は5月、アルジャジーラの取材に対し、「現在のマラウイでアルビノの人々が直面する問題は危機的なものである」とコメント。マラウイを含むアフリカ諸国でアルビノは絶滅の危機に直面 しているものの、各国政府の対応次第でこの状況を止めることは可能であると主張しています。 アムネスティ・インターナショナルの報告書によると、殺害されたアルビノの体の一部が幸運をもたらすとして、お守りや呪術、薬の材料として使われています。殺害されたアルビノの体から手足や臓器が切り取られ、それらは犯罪組織によってブラックマーケットで販売されています。マラウイで暮らすアルビノは約1万人と推測されていますが、身の危険を感じて地元警察に保護を求める人も少なくありません。