ヒットメーカー達が真正面から取り組む『海に眠るダイヤモンド』を考察
正当な評価を受けていない働く人々を、野木亜紀子は時代を超えて描く
神木隆之介が一人二役を演じ、昭和の高度経済成長期と現代とを結んで70年にわたる愛と友情を描く日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS 毎週日曜よる9時~)を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
対照的な二役を演じる神木隆之介
脚本・野木亜紀子、監督・塚原あゆ子、プロデューサー・新井順子。『アンナチュラル』(2018)『MIU404』(2020)など名作ドラマを生み出し、今年は映画『ラストマイル』でも注目を集めるチームが日曜劇場に挑む。歌舞伎町のホスト・玲央(神木隆之介)と謎の婦人・いづみ(宮本信子)が出会う冒頭、いづみの「私と結婚しない?」という突拍子もない提案をする段階では、いったいどうなるのか読めない、全く新しい手ざわりの作品になる予感がしていた。 しかし、いづみが玲央を連れて船で端島(軍艦島)へ向かう船のシーンから、いい意味でいわゆる「日曜劇場らしい」雰囲気が漂い始める。令和のいづみと玲央が観ていた人の気配のしない廃墟の端島が、陽の光を浴びて昭和の頃の姿に生まれ変わる。日本で初めての鉄筋コンクリート造の住宅。世界一の人口密度の島を行き交う大勢の人々。このスケール感! 端島の表現を観ただけでも、スタッフ陣が真正面から骨太なドラマに取り組もうとする決意を感じられる。現代を切り取る鋭いエンターテイメントを作り出すメンバーが昭和を描く。果たしてこれから、どんな物語を見せてくれるのだろう。 令和に生きるホスト・玲央は決して売れっ子というわけではなさそうだ。客には売り掛け(ツケ)を残したまま飛ばれる始末。ホストの仕事に誇りを持っている感じもせず、たびたび無気力な様子を見せる。一方、昭和を生きる鉄平(神木隆之介、二役)は溌剌とした青年だ。端島で生まれ育ち、高校、大学で長崎市に出たものの、端島で働くために戻ってきた。二人はかなり対照的な存在に見える。 鉄平の父・一平(國村隼)をはじめ、端島に住む多くの人々が炭鉱夫として働いている。海底炭鉱という過酷な環境で、命がけで当時の主要エネルギーである石炭を採掘する、なくてはならない職業だ。しかし、彼らは差別的な視線を投げかけられる。鉄平は、島外に出てみて初めて、端島出身者というだけで下に見られる経験をした。端島出身であることにプライドを持つ鉄平は、父の反対を押し切り、端島の炭鉱を管理する鷹羽鉱業に就職、端島で働く決意をする。 「なくてはならない職業の人々が軽んじられる」状況からは、今の世界に必須な、物流を支える人々が効率ばかりを求められ追い詰められる『ラストマイル』を思い出す。誰かのために働き、しかしそれが正当な評価を受けていない人々を、時代を超えて野木は繰り返し描く。