長崎の路面電車はすぐ乗れる市民の足…「出島」に「原爆」、歴史とともに走ります
今回の鉄フォトは異国情緒漂う港町・長崎市の長崎電気軌道です。開業は1915年11月で、営業距離は11.5キロ。朝夕のみや終電の1便だけ運行という系統も含めると5系統あり、市の中心部を網羅するようにレールが走っています。 【写真特集】長崎電気軌道の沿線と車両、見どころをたっぷり
乗車距離にかかわらず運賃は一律140円(小学生半額)。朝夕は通勤通学客で、昼は買い物に出かける地元の人や観光客で、車内はいつもにぎわっています。運行間隔は日中でもおおむね5~9分と、1本逃しても少し待てば次の電車が来ます。屋根の設置や電車の接近表示など停留場の整備も進み、使い勝手も向上。市民の足として定着しているのも納得できます。
沿線には原爆資料館や平和公園をはじめ、出島やグラバー園、中華街、眼鏡橋といった名所が目白押しで、街の散策にも便利です。600円(同)で乗り放題の1日乗車券はスマートフォンでも購入できます。
在籍している車両は事業用やイベント用を含めて20形式72両。68両ある営業用車両のうち8両が低床式です。以前は各地から移籍した車両が多く活躍していましたが、現在はほとんどが自社発注の車両です。
今回撮影した場所は出島停留場近くのビルの上。特別に許可をいただいて、出島のすぐそばを電車が走る場面を狙ってみました。長崎湾に扇形に突き出ていた出島の周りが埋め立てられ、かつては海だった場所を電車が走っていることに、歴史の長さを感じます。
以前紹介した広島電鉄同様、長崎電気軌道も45年8月に原子爆弾が投下された際に大きな被害を受け、全線不通となりました。同年11月に一部区間で運行を再開しましたが、戦災前の全線に近い区間での運行再開には8年近くを要しました。原爆資料館停留場から徒歩数分の爆心地公園そばには、亡くなった社員や乗客らを追悼する石碑が静かに立っています。(東京写真部 佐藤俊和)
※鉄道写真撮影の際のお願いです。マナーを守って安全に撮影しましょう。