俗世間から離れたくても人だらけ…各国が「観光客減」へ舵を切る中、日本は「誰でもウェルカム」のままでいいのか アレックス・カー×清野由美
◆観光先進国で進む対策 海外を見れば、世界的観光地の多くが、すでにオーバーキャパシティに直面しているのも事実です。そしてその多くは「総量規制」と「誘導対策」という、二つのアプローチで緩和を探っています。 「総量規制」とは文字通り、観光客の数そのものを規制、抑制しようとするものです。「誘導対策」とは、ともかく観光客は押し寄せて来るものという前提に立って、数の分散を図る方策です。 「総量規制」として最も分かりやすい方策は「入場制限」です。ペルーのマチュピチュ、インドのタージマハル、ガラパゴス諸島など、入場制限をかけている観光名所はすでに世界に数多く存在します。 アドリア海に面したドブロブニクではコロナ前は1日に4000人、ギリシャのサントリーニ島では同じく1日に8000人を上限にしていましたし、イタリアの世界遺産、チンクエ・テッレでは、年間150万人を上限としていて、1日の訪問者が一定数に達すると、この地に通じる道路を閉鎖していました。 ただ、島や狭い地域、場所であるならば、そこへのアクセスを閉じることで、観光客数を抑制できるかもしれません。これが大きな町の単位になれば、話はそう簡単ではありません。
◆「総量規制」と「誘導対策」 アムステルダムは、バルセロナ、フィレンツェ、ヴェネツィア、そして京都と同じように観光客の過剰、オーバーキャパシティに苦しんでいる都市の一つです。 アムステルダムが行った観光客誘致施策は、2004年に市と観光業界が連携して始めたキャンペーンに遡ります。 オランダ中央統計局(CBS)によると、コロナ前の2017年にオランダに宿泊滞在した観光客数は、内外を含めて年間4200万人。これは市当局に届け出がなされているホテルなどの宿泊客数をベースにした数字であり、民泊への宿泊者は含まれていないので、実際はさらに上回ります。 オランダ政府観光局の調査では、そのうちアムステルダムを訪れた割合が37・8%ですので、約1600万人。これはアムステルダムの市街地人口の実に13倍にあたりますが、試算ではさらにこの先、観光客の増加が予測されています。 アムステルダムにとって、オーバーキャパシティは、コミュニティの存続を揺るがすところまで進展しており、非常に大きな問題です。 そこでアムステルダムは、「総量規制」と「誘導対策」の両輪を回しながら、問題の緩和に取り組み始めています。
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