【山脇明子のLA通信】ニックス吉本泰輔ACが語るエグジビット10契約で大切なこと…「自分のプレーをする」
吉本氏も楽しみにする富永、河村のプレー
吉本氏は大阪府出身で現在43歳、大商学園高校(大阪府)卒業後渡米し、短大やNCAAディビジョン3の大学などでプレー。大学卒業後指導者に転身すると、2008年にニュージャージ=・ネッツ(現ブルックリン・ネッツ)の関連会社へ就職してビデオ分析を学んだ。 その吉本氏がシボドーHCの下で働くチャンスを得たのは、2011年。1986年にNBA最優秀コーチ賞を受賞するなど、アトランタ・ホークス、クリーブランド・キャバリアーズ、メンフィス・グリズリーズの指揮官として活躍したマイク・フラテロ氏がウクライナ代表HCとなり、同チームのビデオコーディネーターになったことに遡る。 「ウクライナのHCになったとき、私はさまざまなスタッフを集めなければならず、ビデオコーディネーターもその一人だった」とフラテロ氏。同氏が、それを相談したのが、吉本氏が当時勤めていた会社で、すると「ぴったりの逸材がいます」と紹介されたのが、吉本氏だった。 「彼の労働論理の高さは素晴らしい。疲れを知らず、仕事を成し遂げるためにあらゆる時間を費やしている。彼のようなビデオコーディネーターこそが、我々が求めていたものだった」と、フラテロ氏は当時を振り返った。 そう感じたのは同氏だけではなかった。同代表のアシスタントコーチで、ブルズのアシスタントコーチだったエド・ピンクニー氏もその一人。前年からブルズを指揮していたシボドーHCに「凄いビデオコーディネーターがいる」と話したことで、シボドーHCと吉本氏の歩みが始まった。 シボドーHCに認められた吉本氏は、以降シボドーHCが違うチームと契約するたびに「右腕」として帯同。同HCは、吉本氏について、「努力家で頭がいい。非常に高いリーダーシップ能力を持っており、優れた指導者だ」と話し、「サマーリーグでチームを指揮した経験により、彼は多くを学び、より良いコーチになっている。(コーチとして経験した)試行錯誤も学びの大きな部分を占めている」と愛弟子の成長を感じている。 昨季ニックスは、イースタン・カンファレンスのプレーオフで準決勝まで勝ち進んだが、故障者が続出する中、インディアナ・ペイサーズと7戦まで戦った末、敗戦。このオフは積極的な選手編成を行っており来季への期待は高まるばかりだが、吉本氏は「私たちはシボドーHCのリードに従うだけ」と冷静だ。それでも、「(昨プレーオフで)チームにチャンスがあったのは確か。でも(負けてまったので)チームとして、もっと良くなるだけです。私たちが目指していることは、日々向上し来季に挑むこと」とさらなる進歩を図る。 NBAに携わっている日本人として楽しみなこともある。今秋、河村勇輝がメンフィス・グリズリーズで、そして富永啓生がペイサーズでエグジビット10契約選手としてNBAに挑戦することだ。 「彼らがプレーするのを見るのが楽しみです。個人的に彼らのことを知っているわけではありませんし、生でプレーを見たこともありません。でも一人はFIBAで素晴らしいプレーをし、もう一人は(アメリカの)大学の高いレベルでプレーしてきた選手です。激しい競争になると思いますが、彼らのチャレンジは、とても意義のあることだと思います」 「エグジビット10契約でキャンプに参加する選手にとって、大切なことは?」と聞くと、こう答えた。 「ほとんどのチームがそうだと思いますが、上の(NBA)チームと傘下のチームは(シーズン中)同じシステムでやっていきます。そのためシーズンの序盤からチームのコンセプト、チームの戦略を自分のものにすることです。そして、フロアに立つ機会を得たら、自分のプレーをすること、自分の長所を発揮していくこと」 日本のバスケ界に大きな影響を与えた渡邊雄太がNBAを離れて日本に戻り、今季から千葉ジェッツでプレーすることになった。しかし、NBAと日本のコネクションはまだまだ続く。 2020年以来の王者復活を目指すレイカーズの八村塁、新風を巻き起こそうと奮闘する河村と富永、そして、ニックスの土台を築いていく一人として粉骨砕身する吉本アシスタントコーチ。 2024-25シーズンも熱くなりそうだ。 文=山脇明子
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