なぜ「蛾」は嫌われる? 「偏見や先入観なくしたい」埼玉昆虫談話会・会員の願い
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
今回ご紹介するのは、虫の愛好家の集まり「埼玉昆虫談話会」です。会員は小学生から90歳まで、250人ほど。先日も月に一度の「金曜セミナー」が開かれ、会員12名が集まって情報交換が行われました。 今回注目された報告が、埼玉で初めて確認された巨大な蛾「キョウチクトウスズメ」でした。「スズメガ科」の仲間で、幼虫はキョウチクトウやニチニチソウの葉を食べて育ちます。緑色と桃色の模様がある羽を広げると12センチほどあり、まさにスズメのようです。 インド、フィリピン、アフリカ、ハワイなどに分布し、国内では1960年に鹿児島県の奄美大島で初めて確認されました。関東では2010年、千葉県の館山市内で幼虫が見つかっているだけで、埼玉県内で確認されたことはなかったそうです。
キョウチクトウスズメについて報告したのは、飯森政宏さん・47歳。去年(2023年)9月、「きれいな蛾がいる。写真撮った」と「X」(旧ツイッター)に投稿があり、それを見た飯森さんはさっそく現地に向かいました。そこで、マンションの蛍光灯に飛来していた1匹を捕獲。「他にもいそうだな」と思い、SNSで調査を呼びかけたところ、さいたま市内8ヵ所、川口市内2ヵ所で幼虫を発見。ニチニチソウの花壇からは「さなぎ」と「抜け殻」も見つかりました。 「これは地球温暖化によるものですか?」と飯森さんに伺うと、以下のような答えが返ってきました。 「移動性の強い蛾なんです。たぶん、台風に乗って沖縄や鹿児島から飛んできて、生息地を拡大しようとしているのではないでしょうか。ヨーロッパでは毎年、アフリカから『キョウチクトウスズメ』が飛来しているので、沖縄から飛んできても不思議ではないんです。ただし寒さに弱く、10度以下になると越冬できないので、埼玉県で『キョウチクトウスズメ』が定着することはないと思いますよ」 蛾の話になると目を輝かせる飯森さん。蛾を好きになった理由を伺いました。