14座制覇に王手! 登山家・渡邊直子さん「シシャパンマ」登頂へ ~いじめられっ子が山からもらった自信と達成感~
その後、その男性が「エベレスト」に登ったことを知り、「自分にも登れるはずだ」と、2013年に「エベレスト」登頂を成功させた。当時は、14座も制覇することなど考えてもいなかったが、楽しくて登っていたら7座を制覇していて、それが日本人女性で初めての快挙だと知り、14座登頂を意識し始めたという。 渡邊さんの1年は、夏と冬は看護師として夜勤などの勤務をこなして資金を貯めたうえで、春と秋にネパールで8000m峰登山に挑戦している。それでも資金が足りず、スポンサーを探したり、クラウドファンディングや、寄付を募ったりしている。 2023年秋にも、残る1座、標高8027mの「シシャパンマ」登頂に挑んだが、途中雪崩に遭い、中断せざるを得なかった。「シシャパンマ」は、14座の中で一番標高の低い山だが、これまで人があまり登っていないため、少人数でロープを張るところから始まり、アイゼンで垂直の雪壁を登るという、非常に難易度の高い山と言われている。 また、登山口が中国(チベット自治区)のみで、登山許可取得が非常に厳しかったが、今回ビザも取得でき、登山許可も得られたことで、今チベットで「シシャパンマ」登頂に向け最終調整に入り、ベースキャンプに向かっている。「何が起きるか分からないけど、10月中にはシシャパンマ登頂達成を目指します」彼女の根底にある意志の強さを感じた。 ■10歳の時の雪山登山をきっかけに、引っ込み思案だった性格が自信へと変わる 福岡県大野城市に生まれ、幼い頃は控えめな性格で、いじめられたこともあったという渡邊さん。 当時のNPO法人「遊び塾ありギリス」の企画で、小学4年生の時に、八ヶ岳登山を初めて経験、その景色の美しさに登っているきつさは感じなかったそうだ。登頂した時の達成感は格別で、「自分にもできる」と自信に繋がった。 中学1年でパキスタンの4700m登山に挑み、高い所で誰よりも強く動けるという新たな自分の一面を知った。学校から離れた場所に、学びと喜びとコミュニティーがあったのだ。 大学3年生の時、6000m峰のチーム登山に挑戦した際、怪我をした人の救護などを担当する保健係を任されたことで、看護師の仕事に興味を持ち始めた。 これまで8000m峰を28回登ってきた渡邊さん。看護師と登山家を両立させながら、「1年で6座制覇」という驚異的な日本記録も樹立している。