「トランプ大統領」再登板でウクライナは見捨てられるのか? 最悪のシナリオは「アメリカのNATO離脱による大混乱」
唯一の希望
大統領選に敗れたトランプ氏はホワイトハウス横の広場で「選挙の勝利は極左の民主党の連中によって盗まれ、さらにフェイクニュースのメディアによっても盗まれた」、「我々は戦う。ともかく死ぬ気で戦う」と支持者に呼びかけた。その結果、数千人の支持者が連邦議事堂を襲撃。警官を含む複数の死亡者が出たほか、最終的には州兵が緊急出動する事態に発展した。実質的にはトランプ氏によるクーデターだったと指摘する識者もいる。 「トランプ氏が行ったことは、国家反逆罪で有罪になってもおかしくない暴挙だったのです。今回の大統領選では民主主義の価値という近代政治思想の根幹が問われたにもかかわらず、アメリカの有権者は目先のインフレ対策に期待してトランプ氏を選びました。大統領選がこんな結果に終わった以上、どれだけウクライナが苦境に陥っても、アメリカが積極的に支援するとは思えません。ウクライナの戦況が悪化することはあっても、好転することはないでしょう」(同・佐瀬氏) それでも唯一、期待できるポイントがある。佐瀬氏は「検索エンジンに英語でトランプ氏の名前と、ライアー(嘘つき)と入力してみてください」と言う。
典型的なほら吹き
「大量の検索結果が表示されますが、注目すべきはニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストだけでなく、ヨーロッパの高級紙も『トランプ氏は嘘つき』という記事を相当な数、配信していることです。彼の場合、今日言ったことが1週間後には変わってしまっています。典型的なほら吹きであり、実際に大統領だった時は多くの主要公約が実現しませんでした。ひょっとするとトランプ氏がウクライナの支援削減を忘れてしまう可能性もゼロではないと思います」(同・佐瀬氏) これまでアメリカはロシアと中国を仮想敵国と見なす政策を採ってきた。ところがトランプ氏はプーチン大統領や習近平国家主席と直接交渉する姿勢を表明してきた。 「こんな方針転換は国務省もペンタゴン(国防総省)も認めるわけにはいかないはずです。アメリカの官僚制では省庁のトップ層は大統領の支持者が任命されます。トップダウンの命令系統を確立するためですが、少なくとも事務方はトランプ氏の指示には必死で抵抗するでしょう。もしトランプ氏が本気でウクライナ支援を打ち切り、プーチン大統領と直接交渉に入ると決断すれば、統合参謀本部は全員が辞表を出してもおかしくないはずですし、私は出すべきだと思います。それにプーチン大統領はトランプ氏のために戦争をしているわけではありません。それほど簡単に停戦交渉は進まないのではないでしょうか」(同・佐瀬氏)