どうすんのこれ…亡夫が母親から相続した土地は原野商法で購入した那須の山林60坪…残された63歳女性が〈昭和の負の遺産〉を前に呆然としたワケ【相続の専門家が解説】
英樹さんの場合 昭和46年に母親が購入した故郷の土地
英樹さん(54歳男性)の場合は、父親から相続した生まれ故郷にある土地です。英樹さんは大学時代から故郷を離れて生活しており、実家は兄が継いでいます。父親が亡くなったとき、母親と兄から、実家の土地を分けることはできないので、父親が買っていた近くの土地を相続したらと勧められて、自分の名義にしました。 しかし、仕事の関係で故郷には戻らず、結婚して子どもができてからは、会社に通いやすいところに家を購入して生活しています。妻も子どもも、英樹さんの故郷には家族で帰省する際に訪れる程度で生活したことはありません。 英樹さんは母親の相続の際に兄と遺産分割協議で苦労したことがあり、そろそろ自分の相続準備として遺言書を作成しておこうと相談に来られました。 自分の財産はシンプルで、自宅は妻に、預金や株などの金融資産は法定割合にすると決めましたので、公正証書遺言の原稿もできあがりました。 しかし、ここで課題になったのは、父親から相続した故郷にある土地です。45坪の山林で、名義替えの費用は掛かりましたが、それ以後、固定資産税の請求もなく、払ったことがありません。 登記簿から推測すると、父親は昭和40年代に買っていますので、値上がりするという期待を持っていたのかもしれませんが、実家から離れた山間のようで、英樹さん自身もよく場所がわからない状況。妻に聞いてもいらないといいます。 英樹さんからは、国庫帰属制度を利用して、妻子には残さないようにしたいという相談でした。 売れる土地であれば、自分で処分しておきましょうとアドバイスしたいところですが、住宅地図や公図などで位置関係を調べてみると、公道に接道しておらず、整地もされていない山林のよう。これでは売却も、国庫に帰属もできないという判断になりました。
雄平さんの場合 親が亡くなって相続しないといけない空き家の実家
雄平さん(63歳男性)が相談に来られたのは、父親が亡くなり、故郷の土地があるため、処分をしてきょうだいで分けたいということで、売るためにはどうすればいいかということでした。 登記簿や公図で場所確認はでき、現地の様子も確認できました。雄平さんの父親の実家は今は解体されておらず、隣接の畑も合わせると150坪の土地は雑木林となっています。建物を解体したのが3年前、父親が亡くなったのが昨年。 昨年までは父親が固定資産税を払っていましたが、今年からは相続人が負担をしなければなりません。建物を解体した結果、更地になった固定資産税は今までの6倍となりましたので、住んでもなく、使ってもいない父親の実家の土地に、年額8万円の固定資産税がかかるようになりました。 相続人は2人で、父親の不動産と預金とでは基礎控除内で相続税の申告は不要ですが、相続の仕方を決めないと相続手続きが進みません。 ネックとなるのが実家の土地で、宅地と農地は一体なのですが、雑木林の現状を見ると買い手がつきません。宅地の林の伐根伐採の費用がネックなのであれば、必要経費を雄平さんが負担することで売却を進めたいとも考え始めたということですが、それでも売れるか不明な奥まった立地のため、難航している状況です。