カツオやマグロだけじゃない!富士山を望む漁港で寒サバとサクラエビを堪能
仲買人組合直営・小川港魚河岸食堂と大井川港漁協直営食堂・さくら
静岡県焼津市には個性の違う三つの漁港がある。カツオやマグロ漁船が入港する焼津港、サバ、アジ、タチウオなど沿岸漁業が中心の小川港、そしてサクラエビ、シラスが主力の大井川港だ。静岡ツウの友人から「焼津って実は近海ものもすごくおいしいんだよ。特にサバは驚きのおいしさ!」と聞き、焼津へ向かった。 せっかくなら静岡市(由比、蒲原)と焼津市でしかとれないサクラエビも食べたい。2港をはしごするべく、駅前にある観光協会でレンタサイクル(9時~17時/1日500円から)を調達。駅前通りを抜け、焼津港沿いの道を15分ほど走る。特産物販売施設「うみえ~る焼津」を過ぎれば、小川港はすぐそこだ。 魚市場の建物内にある小川港魚河岸食堂は、漁師や仲買人など市場関係者も足しげく通う人気店。「最近はサバの水揚げ量が減少傾向にありますが、漁協と県の水産・海洋技術研究所が連携し、飼料の開発や漁場探索の効率化に取り組んでいます。2月~3月にとれる“寒サバ”は特に脂がのっておいしいですよ。塩焼きでどうぞ」と、店長の椿原祐司さんに勧められ、「寒さば焼き定食」をオーダー。 待つこと10分。ジュワジュワと脂の焦げる音と香ばしい香りに思わずお腹も共鳴する。20センチはあろうかという焼き立てのサバの皮はパリパリ、身はふっくら軟らかい。ご飯が進む絶妙な塩加減だ。コク深いサバ本来のおいしさがよく分かる塩焼きにして大正解!
小川港を後に、県道355号を南へ。駿河湾の眺めを楽しみ、港町風情を感じながら、45分ほどで大井川港に到着。「さくら」で1番人気の桜えびかき揚げ丼を注文する。 サクラエビの漁期は3月~6月と10月~12月。休漁期は水揚げされてすぐ冷凍されたサクラエビを使う。丼からはみ出すように2枚のったかき揚げはサクサクで、噛み締めるほどにサクラエビの甘みがじんわりにじみ出てくる。具はサクラエビとネギのみ。甘口のしょうゆダレが素材のうまさをより際立たせる。 「大井川港漁協では40年以上、すべての漁船が協力して漁をし、水揚げ金額を均等割りするプール操業や魚体の大きさを調べる試験操業を繰り返してきました。2023年は128トンと、近年、サクラエビの水揚げ量が増えています」とは店長の尾﨑奈々さん。地元の努力と工夫のおかげで味わえるサクラエビ。おいしさもひとしおだった。 港の近くには「やましち鈴木商店」や、昨年6月オープンの「焼津港丸入(まるいり)商店」もあり土産選びには事欠かない。海産物をごっそり買い込み、前方に富士の雄姿を眺めながらのサイクリングで、満腹はしご旅を締めくくった。 文/中 文子 仲買人組合直営 小川港魚河岸食堂 営業:7時~13時45分(土曜は10時から)/年末年始休 交通:交東海道線焼津駅からバス7分、小川小学校下車徒歩15分/東名高速焼津ICから5キロ 住所:焼津市小川3392-9 電話:054・624・6868 大井川港漁協直営食堂 さくら 営業:10時30分~14時/月曜~水曜、お盆、年末年始休 交通:東海道線焼津駅からバス37分、大井川港下車すぐ/東名高速大井川焼津藤枝スマートICから5キロ 住所:焼津市飯淵1960 電話:054・622・0415 ※「旅行読売」2024年3月号の特集「港町食堂」より