箱根の森に抱かれて。心身を“リトリート”できる隠れ家ホテルへ
深呼吸で胃が活性したせいか、いつものことか……日暮れ前からお腹が鳴る。ダイニングは森の気配を間近に感じられるように、四方の壁面の多くをガラス張りで構成。地産の食材が奏でるディナーは、前菜をあえてバイキング形式に。食べきれないほどの料理がテーブルを埋め尽くす旅館の夕餉と異なり、好みのものを好きな分量だけセレクトできる。 さらに、プリフィックス形式のメインディッシュでは、近隣県産の逸品が凝縮。取材日には相模湾の金目鯛、静岡県産の鶏、神奈川県産の相州牛がメニューに連なった。魚と肉から1品を選ぶのだが、どちらも少しずつ食したいというわがままもハーフ&ハーフとして叶えてくれる。レストランのオープンキッチンに薪火のグリルコーナーを据え、直火で仕上げる光景が食欲をそそる。
お腹を満たしたら、森を抜けて一度部屋へ。一息ついたら、樹々のトンネルをくぐり敷地内の温泉へ。朝食時には、鳥のさえずりを聴きながらダイニングへ向かう。すべての行動が森を媒介とする時間の流れを体感し、内なる自分らしさが蘇生されたような感覚を味わえた。ただただのんびりと、風に揺れる葉音や鳥たちの声に抱かれて過ごす“大人の巣篭もり”を味わってほしい。 住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原1286-116 電話:0460-83-9090 BY TAKAKO KABASAWA 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。