珠洲に涙の「ただいま」 家族4人失った大間さん 震災1年、ようやく現場へ
「ありがとう」「ごめんね」、そして「ただいま」。手を合わせ、そっと目を閉じた。地震で家族4人を失った石川県警の警察官大間圭介さん(42)=金沢市=は1日午前、能登半島地震後初めて現場の珠洲市仁江(にえ)町を訪れた。あの日から1年たっても土砂に埋まったままの妻の実家跡に花を手向けた大間さん。「この1年、家族とずっと一緒だった」。かけがえのない思い出が、涙と一緒にあふれた。(奥能登支社長・山本佳久) 地震で崩れた裏山の土砂が妻子や親戚が過ごす家屋に襲い掛かり、妻はる香さん=当時(38)=と長女優香さん=同(11)、長男泰介さん=同(9)、次男湊介ちゃん=同(3)=が亡くなった。 献花後、記憶をたどるように周囲を歩いた大間さん。土砂崩れでひしゃげ、泥だらけで残されていた乗用車からはチャイルドシートがのぞいていた。金沢の自宅から珠洲に帰省した時は、道中、みんなで歌を口ずさんだ。思い出が詰まった車に手を添えると、おえつが漏れた。 1年前、5人で近くの神社に足を運び、「今年も家族が安全で健康に過ごせますように」と願った初詣の後、突然の別れが訪れた。家族を奪われた苦しみがよみがえりそうで現場に足を向けることができなかったという大間さん。この1年の区切りをつけようとこの日を迎えた。 ●「一日一日無駄にせず」 「いつまでも背を向けてはいられない。生き残った私は家族に生かしてもらった。一日一日を無駄にせず、家族がやりたかったことをしてあげたい」。愛した妻子と一緒に新たな年を前を向いて歩いていく。そう決心して現場を後にした。