「市民に開かれた政治を」…日本では絶対にあり得ない「オープンな政治」を台湾が実行できた秘訣に迫る
コロナ禍において国民全員にマスクを配布するシステムをわずか3日で構築し、世界のグローバル思想家100人にも選出された若き天才オードリー・タン。自身もトランスジェンダーであるタン氏が、日本の若者に向けて格差やジェンダー、労働の問題からの「解放」をわかりやすく語る『自由への手紙』(オードリー・タン著)より抜粋してお届けする。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 『自由への手紙』連載第25回 『「権威者がいない空間」…台湾の敏腕デジタル担当大臣が語った、インターネットが繁栄した納得の理由』より続く
シビックハッカーたちが実現したこと
台湾はオープンガバメントを目指し、立法院議員を抱える全政党は「オープンガバメントパートナーシップ」計画に署名しています。つまり、議会での法案審議はオープンな議会運営方針に則って行うようになっているのです。 たとえば、政府側が「オープンな関係を」と市民に働きかけた場合、それは単に「決めるのはあくまで政府で、みんなの意見を参考までに聞いておく」という場になりがちです。 そんななか、台湾のオープンガバメントが独自のやり方で成功しつつあるのは、それが社会的課題を解決するためにつくられたNPOやNGOなどのソーシャルセクターとつながっていることが大きいでしょう。政府と市民がインターネット上で対話できる仕組みがあるのです。 2016年、台湾最大のシビックテック「g0v(ガブゼロ・零時政府)」が、「vTaiwan(ブイタイワン)」というプラットフォームをつくりました。 g0vは、有志のプログラマーがつくったオンラインコミュニティ。今ではITの専門家だけでなく、作家やアーティスト、学生までさまざまな人たちが加わっています。 そこから生まれたvTaiwanは、インターネットという開かれた場で法令を議論するためのプラットフォームです。 かつて私はvTaiwanの運営側としてAI開発に尽力してきましたが、現在のvTaiwanはソーシャルセクター方式で運営されており、vTaiwanを動かすマシンは、そのソーシャルセクターが管理しています。 よって私の口からvTaiwanについてコメントはできかねますが、私の知る限り、多くの立法院議員がvTaiwanコミュニティに参加しており、市民と議会とが連携しているようです。つまりvTaiwanというインターネット上の「ヒエラルキーのない場」は、大まかな合意形成と、議会という文脈を通して国民が政府に何を期待しているかの協議の場として活用されているということです。