社会保障プログラム法案、実現への課題は?
高齢者の医療費増など社会保障制度改革の「プログラム法案」が、国会で審議中です。制度を維持するために国民に負担増を強いる内容が盛りだくさんですが、改革の実現には多くの課題があります。 このプログラム法案は、医療・介護・年金・子育ての社会保障4分野に関して、改革の項目や実施時期、関連法案の国会提出時期のめどを定めたものです。具体的な中身を決める法案ではなく、いわば「工程表」です。
個別の法律改正も必要
法案の内容をざっくり説明すると、まず医療保険分野については、現行1割に軽減している70~74歳の医療費負担を2割に引き上げます。国民健康保険制度の運営主体を市町村から都道府県に移管します。国民健康保険と75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は、低所得者向けの保険料軽減措置を拡大します。こうした改革を2014年度~2017年度にかけて実施していくという内容です。 介護保険分野については、2015年度から高所得者の自己負担割合を現行の1割から2割に引き上げる、軽度の「要支援者」向けサービスは保険適用から外し、市町村事業として実施する、などの内容が盛り込まれています。 年金と子育てについては不透明な部分が多く、特に年金分野は、内容をめぐって与野党が対立していることもあり、実施期限などは設けられていません。これは、支給開始年齢の引き上げなど国民の関心が高い改革論議を先送りすることを意味しています。 一見、国民に負担増と痛みを強いる改革がめじろ押しですが、プログラム法案はあくまでも今後の「工程」を示したものに過ぎず、法案が成立したからと言って、それだけで改革が進むわけではありません。 プログラム法も一定の拘束力を持っているとはいえ、実際の改革は「健康保険法」などの個別分野の法律を、来年以降の国会で改正しなければ実施できないのです。制度改正の細かい内容について詰めていく作業はこれからで、プログラム法案にも詳細は記されていません。