五輪で「性別騒動」の女子ボクサーに”睾丸”が見つかる…世界中で大論争を巻き起こしている!
スポーツの基本原則が脅かされかねない
ややこしいのは5日、インドのメディアなどで昨年6月のケリフのMRI検査で、「子宮がなく内臓精巣があり、体内に睾丸と、肥大したクリトリスに似た極小ペニスがある」という結果から、医師が彼女を男性と診断した話が報じられたことだ。 記事によると、診断書はフランスとアルジェリアの2つの病院の協力によって作成され、フランス人ジャーナリストが入手した。ケリフは男性の性発達障害である5還元酵素欠損症を患っていると診断されていたという。 この症状では、性器がハッキリせず出生時に女性と見なされることがあるという。この話が事実であれば、ケリフを「生物学上は男性」と見なす向きがあってもおかしくはない。 プロ興行においては、誰が反対しようとショーイベントをやろうと思えばできてしまう。ケリフを支援するアルジェリア政府や同国コミッションが認めれば、自国でのプロ興行でケリフがデビュー戦をすることは容易だ。 世界基準で統率をとる世界王座団体や他国のコミッションは、それぞれの判断で興行を行うことができ、足並みが揃わない可能性もある。たとえばケリフが日本に来た場合、日本ボクシングコミッションのルールに染色体検査の明記はなく、性発達障害のケースは想定していない。パスポート上で女性であれば、現状では出場を止める理由が見当たらない。 この場合、たとえコミッションが資格を与えても王座団体がランク入りを許すかも不透明だ。 老舗のWBCは、マウリシオ・スライマン会長が、「XY染色体を持っているなら、より強いパワー、持久力、スピード、筋肉量を持っていることは疑いの余地がない。大きな競争上の優位性を獲得し、フェアプレーを排除し、対戦相手の安全に重大なリスクに晒す」と懸念を示している。 IBAと合同でプロ興行を行なっているWBAも、IBAの反対姿勢を支持すると思われる。IBFは検査が非公開だった点や、失格になった2選手がIBAに異議申し立てをしなかったことなどを指摘。WBCよりは弱い表現で懸念を示す姿勢を見せた。WBOは11月の総会でこの議題を話し合ったが、何の結論も出せなかった。 ケリフは注目度の高い選手なだけに、大金が動くならと出場を許容したいプロモーターもいるだろう。対戦相手も高いファイトマネー目当てでオファーを受けるかもしれないが、トランスジェンダーの問題しかり、スポーツ競技に必要な公平性、安全性で線引きができなければ、それこそボクシングが「男が女を殴って喜んでいるスポーツ」などと悪意ある勢力の攻撃対象になってしまう。 そこはケリフ個人の扱いではなく競技ルールを見直す視点で、ボクシングの公平性、安全性をどう保つか、世間の人々の冷静な意見交換も求められる。
片岡 亮(フリージャーナリスト)