「公私混同」は歓迎だが「接待」はNG…シリコンバレーと日本のビジネス倫理の違い
サンリオ米国法人のCOOを経てシリコンバレーでピジョン、LINEヤフー、トランスコスモスなどの社外取締役を務める鳩山玲人さん。多くの成功者の観察を元に「シリコンバレー流の学び方」のエッセンスを紹介する。『シリコンバレーで結果を出す人は何を勉強しているのか』より一部を抜粋してお届けします。
日米で反応が異なる「公私混同」
日本では、「好きなことを仕事にする」というのはきれいごとのように思われがちです。好きなことに邁進(まいしん)している人が、「あれは道楽だ」と白い目で見られることさえあります。 たとえばZOZO創業者の前澤友作さんが宇宙旅行を目指したとき、あるいは堀江貴文さんがロケット打ち上げに邁進しているとき、批判的なコメントをする人がたくさんいました。 実際に前澤さんが宇宙に行き、堀江さんが出資するインターステラテクノロジズがロケット打ち上げに成功した今では批判もトーンダウンしたように感じますが、日本で「好きなことに取り組むこと」「楽しむこと」があまり肯定的に捉えられない傾向は根強くあるように思います。 おそらく趣味と仕事を一致させるのは「公私混同である」という意識が強いのでしょう。 一方アメリカでは、イーロン・マスクが宇宙開発企業「スペースX」を作って宇宙船を打ち上げたり、ジェフ・ベゾスが「ブルー・オリジン」を作って宇宙旅行に行ったりしています。しかし彼らが宇宙事業に取り組み始めたとき、アメリカでは日本のようにそれを批判的に見る空気はありませんでした。これは、「趣味と仕事」あるいは「夢と仕事」が一致することを肯定的に捉える文化があるからでしょう。 もちろん仕事としてやる以上はお金を稼ぐ必要がありますが、好きなことを追求していけば、おのずと専門性が高まるので、好きなことを仕事にするほうが稼ぎやすいはずだともいえます。 私は、日本でももっと「趣味と仕事の一致」をポジティブに捉えてもいいのではないかと思っています。 なお「公私混同」について付け加えると、アメリカでは日本でなら許容されるような「公私混同」を厳しく排除する面もあります。 ビジネスで求められる倫理観は、実は日本よりも厳しいのです。 たとえば、日本ではゴルフを趣味にしている人が海外出張のときにゴルフにも行くというのは、同行する人とのコミュニケーションという意味で認められることが多いように思います。 しかし、このような「公私混同」はアメリカでは例外的です。 業界によっては日本では当たり前の「接待」が違法とされているケースもありますし、たとえば小売りの場合でいえば、メーカーとバイヤーが一緒に飲みに行くといったことは考えられません。それどころか「ボールペン1本も受け取ってはいけない」というのが、アメリカのビジネス倫理です。 「車が好きだから車に関するビジネスをしたい」とスタートアップを立ち上げることは歓迎されますが、「会社の経費で好きな車を買う」といったことはしないわけです。 アメリカでビジネスに関わる場合は、アメリカでは当たり前のビジネスの倫理観を持つよう留意する必要があります。