看護師ら“ボーナス大幅カット”で「大量離職」の危機? “入院患者1万3000人”に対応できなくなる「推計」も
「使命感だけでは続けていくことができない」
また、米沢書記長は、もう一つの懸念も示した。それは若者の「医療・介護職離れ」だ。 医労連が今年4~5月に全国で行った「看護職員の入退職に関する実態調査」によると、調査した32都道府県・125施設のうちの約7割(67.2%)にあたる84施設が、看護職員が「充足していない」と答えている。 さらに、医労連調査によると、看護師養成の大学・短大、専門学校等で入学者数が10年前(2014年)の6万3672人から今年(2024年)は5万6142人と、およそ7500人減っている。 生涯賃金も医療・介護職は全産業と比べて下位にあり(連合調査)、「賃金が上がらない、賃金が低い、そうしたことから(若者らに)なかなか選ばれにくい職業になっている」と米沢書記長は話す。 北海道札幌市の基幹病院で働いていた元看護師の松田加寿美書記次長は、前述した「看護職員の入退職に関する実態調査」で寄せられた“声”も踏まえ、現場で起きていることについて次のように説明した。 「看護師は『患者さんのケアをしっかり行いたい』という使命感をもって仕事にあたっているが、人がいないことによって清潔ケアができない、ナースコールにすぐ対応できない、といった患者サービスの低下が続いている。使命感や責任感だけでは仕事を続けていくことができない」
「臨時の報酬改定を速やかに行ってほしい」
佐々木悦子中央執行委員長は、「経営赤字を理由に年末一時金の大幅引き下げを回答している医療機関、介護事業所が複数出ている。(求めている)賃上げどころか大幅賃下げとなっている」と窮状を語り、「このままでは看護師、介護職員の退職に拍車がかかる。必要人員を確保できないことから、病棟を閉鎖せざるを得ない、ベッド数を減らさざるを得ない、という医療機関も少なくない」と訴えた。 一時金大幅引き下げなどの“背景”でもある医療機関・事業所等の経営赤字。その理由について米沢書記長は「さまざまな要因が考えられるが、診療報酬・介護報酬の水準が据え置かれている中で、物価が高騰していることなどが挙げられる」と述べた。 利益を追求できる民間企業と異なり、国によって決められる社会保障関係費の診療報酬・介護報酬に頼る医療、介護機関。 低い収入、賃金体系を打開するためにも、米沢書記長は「ケア労働者の賃上げを緊急に公費で行ってほしい。低賃金の構造的問題の診療報酬・介護報酬等のあまりにも低い水準を見直してほしい」と訴え、さらにこう続けた。 「思い切った賃上げをしなければ、大量離職につながりかねない流れを止めることはできない。手遅れになってしまう」 ■榎園哲哉 1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。
榎園哲哉