金利上昇局面なのに…銀行株はなぜ活気づかない?【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】
【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】#134 年初から日経平均の高値更新を牽引してきた銀行株だが、8月上旬の暴落後の戻りはさえない動きになっている。 【写真】「松屋」の大ヒットシュクメルリ鍋定食は季節メニューに“昇格” 金利上昇を見越して銀行株を仕込んできた投資家はイライラしているのではないだろうか。 7月末から9月26日までを見ると、日経平均は99.5%まで回復しているが、メガバンクの株価の戻りはいずれも80%台である。理論上、金利上昇は銀行に大いにプラスで、この先も日銀は政策金利を上げていく方針だから、銀行株はもっと活気づいて不思議ではないのに、この低迷である。 原因はどこにあるのか。ポイントは4つだろう。 ①日本の金利上昇は緩やかで限定的 ②仮に利上げが進んでもそれが収益に寄与するのかという疑問 これはちょっと説明が必要だろう。銀行の利益は、預金などの短期資金を長期の投融資で運用して稼ぐのが基本。ところが、日本では長期国債に対する国内投資家の需要が強く、待機資金は200兆~300兆円規模と推察されるほどで、そのために長期金利が上がらない。最近は0.8%台前半に低下し、短期との金利差が縮小しているのが現実。これではうまみは少ない。 ③不良債権増加のリスク 金利が上昇すると、企業や個人の借り入れコストが増加し、返済不能や不良債権の増加リスクが高まってしまう。銀行の財務健全性に対する懸念が広がるというわけだ。 ④海外投資家の慎重な姿勢 邦銀株も、海外の機関投資家が大きな影響力を持っているが、上記の②や③の理由に加え、日本の銀行株は自己資本収益率が低く、欧米の銀行に比べ収益性が悪いとみられている。こうしたことが海外からの積極的な投資を抑制しているのだ。 以上のように、金利上昇で恩恵を受ける数少ない業種である銀行株もこれだけ問題点を抱える。久しぶりの「金利のある世界」になった日本だが、株式市場が上昇を継続するのはまだまだ厳しいものがあるということだ。 (丸)