“インバウン丼”で話題の豊洲「千客万来」は今どうなっているのか…現地に広がっている「意外な光景」
「インバウン丼」で話題になった商業施設
2024年2月1日、豊洲市場の隣に新しい商業施設がオープンした。 「豊洲千客万来」だ。 【写真】インバウン丼で話題の豊洲「千客万来」の様子 大手・温泉施設グループとして知られる「万葉倶楽部」が施設管理者で、建物は、飲食街である「豊洲場外 江戸前市場」と、温泉施設「東京豊洲万葉の湯」から成り立っている。 施設全体としては江戸時代の街並みが再現されていて、中には大きな「時の鐘」もある。さながら江戸時代をテーマにしたテーマパークのようで、「日本の食を通じて世界に日本文化をアピールする」という理念のもと、訪日観光客向けの施設であることが全面に押し出されている。 「千客万来」は、2月のオープン直後、そこで売られている海鮮丼の値段で話題になり、「インバウン丼」なるネットミームが生まれたほど。ウニ丼が18000円、みたいな話がセンセーショナルに取り上げられていた。最近では、ニセコをはじめ、観光地におけるインバウンド向けの商品が、非常に高値で提供されていることが話題だが、その文脈で千客万来も有名になったのだ。 そのためネット上では「観光客相手にするのはいいけど、またコロナになったらどうするんだろう」「こういう地元の人を大事にしない商業施設は廃れていくだけ」「築地のように地元に根付く存在にはならないと思う」など、厳しい意見も。 では、オープンから2ヶ月ほど経って、実際に同地はどのように受容されているのだろうか。今回は同地へのフィールドワークを通して、その姿に迫っていく。 現地に訪れて見えてきたのは、 ---------- ・当初騒がれたほど、全ての商品の値段が高いわけではない ・外国人観光客を意識しすぎて施設の魅力が下がっている ---------- ということだ。
当初騒がれたほど「高い」わけではない
筆者が同施設を訪れたのは平日の昼間。あいにくの雨の日。そんな日を選んだのはわざとで、雨が降っていても、ここに人が集まるのかを見たかったからだ。 まだオープンから2ヶ月ほどということもあり、雨でも人は多い。私はゆりかもめの「市場前」駅から向かったのだが、駅から施設に向かってずっと人が続いているような状態だった。ちなみに、「千客万来」は駅から直結で行くことができ、雨の日もそこまで濡れずにすむ。 客層は、外国の人と日本の人で4:6ほど。日本の人が予想以上にいて、特に若い層が多かったのが印象的であった。 話題になった「インバウン丼」はもちろん健在。海鮮丼が6980円だったり、7800円だったり。とはいえ、これって観光地ではある意味適正価格か…? などと思いつつ、他にもいろいろ歩いてみる。 いろいろ歩いて思ったのは、食の選択肢の幅は広いこと。それもそのはずで「千客万来」は1階~3階までにぎっしりと飲食店が軒を連ねている。 筆者が見た範囲では、抹茶のモンブランやクレープなどのスイーツに長蛇の列ができていた。みんな、雨の中、傘をさして並んでいたりもして、スイーツへの情熱には驚かされる。また、昼間ではあったが、カウンターのある居酒屋では、魚をツマミに飲んでいる客も多く、比較的、多様な食の楽しみ方があると思う。 【後編】『豊洲「千客万来」は“インバウン丼”以外も残念だった…外国人観光客に合わせすぎた「悲しい現実」』では、外国人観光客を意識しすぎて施設の魅力が下がっていることについて解説する。
谷頭 和希(ライター・作家)