第37回東京国際映画祭、コンペティション部門に日本映画3作品「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」「敵」「雨の中の慾情」
第37回東京国際映画祭(10月28日~11月6日開催)のラインナップ発表会見が9月25日、都内で行われた。コンペティション部門には、大九明子監督の「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」、吉田大八監督の「敵」、片山慎三監督の「雨の中の慾情」(台湾との合作)の3本が選出されており、会見に出席した3監督が映画祭への意気込みを語った。 今年のコンペティション部門は2024年1月以降に完成した長編映画を対象に、110の国と地域から2023本の応募があった(昨年は1942本)。審査委員長を務める俳優のトニー・レオンをはじめ、橋本愛(俳優)、エニェディ・イルディコー(映画監督・脚本家)、キアラ・マストロヤンニ(俳優)、ジョニー・トー(映画監督、プロデューサー)が審査員として、コンペティション部門の全15作品を審査する。 東京国際映画祭の常連ともいえる大九監督は、「この映画祭で見つけていただき、違う世界が広がった大事な場所」と強い思い入れを示し、「まさか、今回もお声がかかるとは。すごく光栄ですし、何か貢献できることがあればやっていきたい」と意気込み。「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」は、主演・萩原利久、ヒロイン役に河合優実を迎えて、お笑いコンビ「ジャルジャル」福徳秀介の小説家デビュー作を映画化した。「若い人たちの些細な思いをどんどん盛り込んで、すごくわがままに作らせてもらった」と語った。 吉田監督は、「紙の月」が第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、観客賞と最優秀女優賞(宮沢りえ)に輝いており、「当時の楽しかった思い出が残っている」。筒井康隆氏の小説を映画化する最新作「敵」は、長塚京三が12年ぶりの映画主演を務めており、全編モノクロで撮影。「主人公のストイックな生活を描くのに、抑制的なモノクロが合っていた。見る側の創造力を最大限に広げてくれ、思った以上に豊かだなと思った」と新たな挑戦に手応えを示した。 そして、片山監督の「雨の中の慾情」は漫画家・つげ義春の同名短編を独創性あふれるラブストーリーとして映画化。2人の男と1人の女の切なくも激しい性愛と情愛を描き出す。ほぼ全編台湾でロケを敢行しており、「町の風景を楽しんでもらえれば」とアピールした。 オープニング作品は、「孤狼の血」「碁盤斬り」の白石和彌が監督、山田孝之と仲野太賀が主演を務める時代劇アクション「十一人の賊軍」。また、今年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され、審査委員の1人でもあるマストロヤンニが出演する「マルチェロ・ミオ」(クリストフ・オノレ監督)がクロージング上映される。 世界の国際映画祭で注目された話題作や邦画の最新作などを上映するガラ・セレクション部門には、綾瀬はるか主演の「ルート29」(森井勇佑監督)、松坂桃李が主演する「雪の花 ともに在りて」(小泉堯史監督)、松重豊が監督&主演を務める「劇映画 孤独のグルメ」、「リアル・ペイン 心の旅」(ジェシー・アイゼンバーグ監督&出演)、「ホワイトバード はじまりのワンダー」(マーク・フォースター監督)など、国内外から全13本がラインナップされた。 また、新部門として「ウィメンズ・エンパワーメント」(Women’s Empowerment)を創設。メインのコンペンティション部門やガラ・セレクション、長編3本目までのアジアの新人監督のコンペである「アジアの未来」など主要9部門で構成されていたが、今年加わる新部門は、東京都と連携し女性監督の作品、あるいは女性の活躍をテーマとする作品に焦点をあてた部門となる。 会見には、本映画祭のフェスティバル・ナビゲーターに就任した菊地凛子が駆けつけ、「東京国際映画祭は都市で開催される、ユニークで特別な映画祭」だと語り、「映画を通して会話できる、代えがたい宝物のような時間。たくさんのクリエイターとつながることが大事なこと」と国際映画祭の意義を強調した。 また、Nippon Cinema Now部門で特集上映が行われる入江悠監督は、「普通、特集上映といえば、一貫性のある監督のものだと思うが、自分は本当に一貫性がない。なんで、こんな変なフィルモグラフィーになったのか(笑)。きっと飽きっぽい性格だからだと思う」と自己分析。「日本映画の製作現場は、貧しくなっている。どう映画を作っていくべきか議論し、発信できれば」と抱負を語った。 【コンペティション】(全15本) 「アディオス・アミーゴ」(コロンビア/監督:イバン・D・ガオナ) 「小さな私」(中国/監督:ヤン・リーナー) 「死体を埋めろ」(ブラジル/監督:マルコ・ドゥトラ) 「士官候補生」(カザフスタン/監督:アディルハン・イェルジャノフ) 「娘の娘」(台湾/監督:ホアン・シー) 「英国人の手紙」(ポルトガル/監督:セルジオ・グラシアーノ) 「彼のイメージ」(フランス/監督:ティエリー・ド・ペレッティ) 「雨の中の慾情」(日本、台湾/監督:片山慎三) 「わが友アンドレ」(中国/監督:ドン・ズージェン) 「お父さん」(香港/監督:フィリップ・ユン) 「大丈夫と約束して」(スロバキア、チェコ/監督:カタリナ・グラマトヴァ) 「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」(日本/監督:大九明子) 「敵」(日本/監督:吉田大八) 「トラフィック」(ルーマニア、ベルギー、オランダ/監督:テオドラ・アナ・ミハイ) 「チャオ・イェンの思い」(中国/監督:ミディ・ジー) <第37回東京国際映画祭 開催概要> ■開催期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水) ■会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区 ■公式サイト:www.tiff-jp.net