「ゴジラ-1.0」プロデューサーが奇跡の実話「ディア・ファミリー」を手がけるまで
プロデューサー中毒とは!
プロデューサーの面白さとはいったい何だろうか。岸田は少し考えて、こう切り出した。「僕が一番好きなのは完成披露試写会。一般の人に初めて見てもらえる場だから」。舞台の袖から「観客の反応、笑ったり、泣いたり、怒ったりを見るのが楽しい」と話す。映画として、作品として完成したことはもちろんうれしいが「僕の〝 妄想 〟した映画を楽しんでいる人がいる。作ってよかったと感じる瞬間」と声を弾ませる。 初めてアシスタントプロデューサーとしてついた「君の膵臓をたべたい」(17年)の完成披露試写会でそう感じて「(この仕事)いいなあ」と実感した。「それからは麻薬みたいなものです」と柔らかい表情になり、「運がいいんです。先輩にも感謝しています」と話した。 「プロデューサーは(映画の)設計士、監督は棟梁(とうりょう)。どんな映画を作り、どんな話にするかなど最初に絵をかくのはプロデューサーの仕事」。現場は監督のもので、何かあればプロデューサーも出ていくという。「仕事は、8割は大変だが、2割は楽しい」とも語る。「嫌なことは日々あるが、技術が進んでも、相手はどこまでいっても人だと思っている。映画は作ることが目的ではなく、見てもらうことが目的。その先に観客がいる。人と営み、人から逃れることはできない」とにこやかに話した。
映画記者 鈴木隆