ラグビーで二刀流はアウト?!異色の大学生トップリーグラガーマンの奮闘
山沢は筑波大で最終学年を迎えていた。本来であれば同級生たちと悔いのないシーズンを過ごしたかった。 本人の心情を鑑みたパナソニックと筑波大は、日本協会に二重登録ができないかを交渉した。ある時はパナソニックの公式戦、またある時は大学ラグビーのビッグゲームに出られれば、三者にとってwin-winの関係になるという考えである。 筑波大の古川拓夫監督は、「彼にとっていい環境を提示することが必要だと思っています。筑波大で怪我をしていたことを考えても、彼にとっての時間は限られています。必ずしも筑波大の山沢である必要はない」と発言していた。ところが結局、前例のない二重登録は認められなかった。すでに単位のほとんどを習得している山沢は、筑波大でのラストイヤーを諦めることとなった。 誰も歩んでいない道を歩む山沢は、目下、トライアンドエラーのなか確かな足跡を残している。 故障からの復帰後初の公式戦となったのは、2016年8月26日のトップリーグ開幕節だ。山沢はスターティングメンバーだった。ヤマハに21-24と敗れて「何も通用したと感じたことはなかった」とうなだれたが、第2節もスターターとしてプレー。インサイドセンターであるバーンズの指示を受けながら、パナソニックのシステムをどうにか咀嚼していった。 一時は登録メンバーからも外れたが、間もなく3度目の先発機会が訪れた。3戦連続でスタンドオフだったベリック・バーンズが、肩の脱臼で離脱したからだ。山沢は10月8日、地元に近い埼玉・熊谷陸上競技場でNECとぶつかる。チーム戦術と周囲の声に沿って、鋭いキックを交えてゲームメイク。その延長線上で、持ち味のランを光らせた。 前半10分、相手守備網を切り裂いて一気にインゴールへ球をねじ込む。トップリーグ初トライだ。後半にも、自陣深い位置からの突破でファンを沸かせた。 最終スコアは51―26。山沢は、顕著な活躍をした人に与えられるマン・オブ・ザ・マッチを獲得した。 「山沢が一度チーム(レギュラー)から離れてよかったのは、外からバーンズのプレーを観察できたこと。また、彼はたくさんのゲームプランを吸収しなければならなかった。そのホームワークをやってきたことが、きょうのプレーに繋がった」 例のNEC戦後、勝ったディーンズ監督がこう語る一方、敗れたピーター・ラッセルヘッドコーチもこう認めた。 「パナソニック全体で、いいコントロールをしている。いい印象でした」 史上初めてとなる大学生のトップリーグ挑戦は、いまのところ滞りなく進んでいる。大らかな名手揃いのパナソニックと、完璧主義の山沢との相性が良いからでもあろう。トップリーグは約1か月の中断期間を経て、12月に再開。NEC戦以降、山沢はここまで6戦連続で先発中だ。本人も充実の声を残す。 「10月の試合では特に、試合の組み立て方、チームをどう動かすかを意識していました。プレー選択のあやふやだった部分が、少しずつ明確になってきた」 とはいえ、山沢の後にどれだけの選手が続くかは不明だ。