照明、LED化に拍車…「一般用蛍光ランプ製造・輸出入」27年末禁止で懸念事項も
癒やし提供・カメラ搭載、付加価値向上急ぐ
メーカー各社はこれ以上の値上げの抑制に努める。パナソニックエレクトリックワークス社では新潟工場(新潟県燕市)などの製造拠点でモノづくりの整流化や内製化などに取り組む。 中国・大連工場でLED照明関連商品を手がけるアイリスオーヤマも価格維持のための取り組みを活発化する。江藤事業部長は「生産設備の改善や部品の共通化などを一段と進めている」とし、国内の物流拠点の拡充も図る。 ほかにも東芝ライテックは設計や部材の見直し、製造効率の改善、そして物流コスト削減などに注力。またホタルクスは、搭載部品の見直しや原価低減に努める。
ただ価格競争力の維持には限界があり、各社は付加価値を向上した製品をそろえる。パナソニックエレクトリックワークス社は、働く人の活動に必要な部分だけ照らしリラックスや集中力向上を図り、企業の従業員満足度の向上と省エネルギーを両立する「メリハリ照明」を展開。ホタルクスの「HotaluX VIEW(ホタルクス ビュー)」は照明にデザインを施し、人が癒やされる空間をつくる。 さらに東芝ライテックはカメラ付きLED照明「ViewLED(ビューレッド)」を展開する。天井にある照明にカメラを搭載したことで死角が少ない画像を撮影できる。録画や保存のほかにも、撮影した画像を分析するサービスも提供する。 またアイリスオーヤマは照明事業と社内の関連事業部とを連携。「省エネソリューション」事業としてエネルギー価格高騰による節電需要をターゲットにLED照明の普及に取り組む。空調制御事業などとの協業を視野に入れる。
高効率照明、30年100%へ 駆け込み工事増加、業者不足を懸念
JLMAは1月時点のストックに占めるLEDなどの高効率照明の割合を58・8%と推測。日本政府は30年までに100%にする目標を掲げているが、その達成にはまだ遠い。 LED照明への切り替えに伴う工事が、普及の壁として立ちはだかる。テクノ・システム・リサーチの太田氏は「(30年の目標に)間に合わせるのは難しいのではないか」と指摘。住宅の玄関、トイレなどにある照明の取り換えが遅れると分析する。さらに柳橋ホタルクス執行役員は、特定の時期に交換需要が高まることで「工事に関わる業者が足りず、施工ができない事態が発生するのではないか」と懸念する。 もちろん各社も対策を打つ。アイリスオーヤマは商品開発から施工、アフターサービスまで一気通貫で顧客を支援する。またパナソニックエレクトリックワークス社は作業量の削減や施工時間短縮など負担を軽減する省施工製品「ハヤワザリニューアル」を展開する。 加えて長期使用もストックのLED化が進まない一因だ。10年をめどとした交換が目安といわれるが「壊れてから交換するケースもある」(JLMA)のが実情だ。 懸念事項はほかにもある。医療用途などで使われる特殊用の蛍光ランプへの影響だ。27年末に製造や輸出入が廃止されるのは一般照明用。ただ一般照明用と特殊用途で使うランプで共通する部品があるといい、一般照明用の製造が廃止になることで部品調達に影響が及び、特殊用途の製造が困難になる可能性は否定できない。 こうした問題がありながらも鹿倉JLMA専務理事は、COP5での決定に関し「LED化推進の『切り札』になるかもしれない」と期待する。照明メーカーにもLED需要増を見据えた取り組みの強化が求められる。
日刊工業新聞