渡辺康幸が占う箱根駅伝2025 創価大を筆頭に「3強」を追うグループは? 予選会トップの立教大、学生連合も注目
【ふたりの東大生ランナーにも注目】 ――予選会突破組の印象はいかがでしょうか。 渡辺 トップ通過の立教大は、今後への展望も含めて魅力があるチームです。就任1年目の高林祐介監督の指導が見事で、来季以降にも光が見えるチームです。全日本大学駅伝でもシード権を獲得しましたし、自分で考えられる選手が多く、そうした選手たちとの信頼関係を築いている。 高林監督が駒大やトヨタ自動車で培ってきたものを浸透させ、課題でもあった長い距離で戦うために足りない要素、「速さだけじゃなく強さも必要だよ」ということを教え込んだ結果だと思います。 ――トップ通過は、選手たちの自信にはなります。 渡辺 一方で油断になることもあるので、その点は気をつけなければなりません。私自身も早大の監督時代に予選会をトップ通過してシードを落としたこともあります。 予選会の結果と本戦の結果はリンクしないものなので、その点は2位通過の専修大にも共通している部分です。 ただ、今回の全体的な情勢を見ると、予選会組がシード権を獲得することは、かなりハイレベルな挑戦になるように見えます。 ――予選会組でシード権争いの観点で面白そうなチームは、ありますか。 渡辺 日本体育大は、善戦する雰囲気を感じさせます。全日本でも見せ場を作りましたし、12月の日体大競技会でも結構みんな走れていました。玉城良二監督が徹底してチームを作ってきているので、総合力の点で見ると期待感はあります。課題を挙げれば単独走になったときにしっかり力を出しきれるかどうか。 ――ここ数年、高いチーム力を誇っている中央大は今季、トラックはすばらしい成績を残していますが、駅伝についてはあまり元気がありません。 渡辺 トラックの10000m上位10人のランキングでは出場校中トップです。はっきりとは言えない部分もありますが、スパイクを使ったトラックでの強化に注力している印象もあり、ここまでのふたつの駅伝では思ったような結果が出ていないので、強化のなかでロードとのバランスがうまく取れていないのかもしれません。 好ランナーが揃っていることは間違いないですが、距離が伸びる箱根でどのような結果になるのかは見えづらいです。 ――ほかのチームについてはいかがですか? 吉田礼志選手(4年)という学生界を代表するランナーのいる中央学院大も、近年はなかなか上位に絡んできません。帝京大のようになれる潜在能力はありますが、何かきっかけが欲しいところです。 東京国際大はリチャード・エティーリ(2年)、佐藤榛紀(4年)の両選手を中心に往路10位以内の候補と挙げられると思いますが、10区間全体で見ると、少し選手層が薄い印象です。 下級生中心(エントリーメンバー16人中10人が2年生以下)の順天堂大、ともに新指揮官の下で迎える山梨学院大と神奈川大、前回は往路で見せ場をつくった日本大はシード権争いに絡むにはハイレベルな挑戦ですが、自分たちの力をしっかり出しきることでどんな結果になるのかというスタンスで臨む形になると思います。 ――お聞きしていると、勢力図の大きな変化は起こりにくそうですね。 渡辺 優勝候補の3強にそれを追うグループ、シード争いの上位校が安定した戦力を持っていますからね。 ――ほかに渡辺さんが個人的に注目しているポイント、選手がいればお願いします。 渡辺 関東学連連合チームの古川大晃(博4年)、秋吉拓真(3年)という、ふたりの東大生ランナーはすごく注目しています。古川選手は現在29歳で初めてつかんだ箱根のエントリー枠というバックグラウンドも含めて、秋吉選手は5000m13分台、10000m28分台の走力が魅力です。ほかにも2区候補の片川祐大選手(亜細亜大4年)、栗原舜選手(明治学院大4年)も秋吉選手同様に走力を誇っているので、オープン参加とはいえ、10位前後くらいでつなぐ可能性も秘めています。 ⚫︎プロフィール渡辺康幸(わたなべ・やすゆき)/1973年6月8日生まれ、千葉県出身。市立船橋高-早稲田大-エスビー食品。大学時代は箱根駅伝をはじめ学生三大駅伝、トラックのトップレベルのランナーとして活躍。大学4年時の1995年イェーテボリ世界選手権1万m出場、福岡ユニバーシアードでは10000mで優勝を果たし、実業団1年目の96年にはアトランタ五輪10000m代表に選ばれた。現役引退後、2004年に早大駅伝監督に就任すると、大迫傑が入学した10年度には史上3校目となる大学駅伝三冠を達成。15年4月からは住友電工陸上競技部監督を務める。学生駅伝のテレビ解説、箱根駅伝の中継車解説でもおなじみで、幅広い人脈を生かした情報力、わかりやすく的確な表現力に定評がある。
牧野 豊●取材・文 text by Makino Yutaka